【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス(5)

前年度に国内のアニマルウェルフェアにとって効果的だった企業に贈るアニマルウェルフェアアワード。昨年から始まり、今年も鶏賞、豚賞、牛賞が決定した。国際的にみたら全体的に遅れている日本のアニマルウェルフェア、どんなに頑張っても評価されにくい。なんといっても国の法規制自体が格付け「G評価」で最も低い評価を受けている国である。(認定NPO法人アニマルライツセンター代表理事=岡田 千尋)

アニマルウェルフェア優良企業は

BBFAWという畜産動物福祉のベンチマークでも、日本を代表するグローバル企業たちが、アニマルウェルフェアへの取り組みの証拠を見つけることができないという低い評価を受けている。国際的な競争の中で公正に評価すると、そうならざるを得ない。

しかし、日本の中に閉じて見てみれば、評価されるべきすばらしい取り組みはある。世界の流れに追いつこうと努力を始めた企業も多数あるのだ。そんな取り組みをする企業のなかでも、インパクトが高いと考えられる企業を選定した。

■採卵鶏と肉用鶏部門:鶏賞

・イムホテル京都
市民団体と協業しながら、ケージフリー、エッグスマート宣言をする決断した。2027年にはエッグフリーを目指し、どうしても卵が必要なときは平飼い卵を使用することを目標としている。地球の持続可能性を考えた時、最も効果のある宣言の仕方であった。そして嬉しいことにすでに移行に向けて取り組み始めている。

・週刊現代
ケージフリーの飼育が良いことであることは、知れば誰もが認めることであるにもかかわらず、立場を明らかにしないメディアが多い日本。その中で、ケージフリーを推奨する立場を明確にしながら現在の日本のアニマルウェルフェアの遅れを指摘した。また取り上げるメディアが未だ少ないブロイラーについても同様に問題点を明らかにした。

週刊誌という特殊な業種を選定したのは、それだけインパクトが大きかったためだ。これまで届いていなかった層に、アニマルウェルフェアについての情報がリーチした。アニマルウェルフェアの向上は市民全員に関わっており、また全員の力と理解が必要であるため重要な発信だったのだ。

■豚部門:豚賞

・プリマハム

今後新設・改築する場合は妊娠ストールを使用しない(ストールフリー)ものにすることを表明し、またサプライチェーンの方向性も含めて言及した。

世界では、畜産動物のストールフリーの流れは主流であり、大手食肉企業が拘束飼育をしない飼育に移行を完了し始めているところである。しかし日本では拘束飼育をしないとう方向性すらもはっきりしていなかった。プリマハムの方針は、日本でも、今後の方向性がストールフリーであることを決定づける効果があった。

同社の投資家向けの総合レポートやESGデータブックなどでも、欧米からの遅れを真摯に受け止め、アニマルウェルフェアがビジネス上の問題であることが明記された。そして、国際基準に合わせていく形で実践し始めている。

■乳牛と肉牛部門:牛賞
・あいコープみやぎ

販売する牛乳は放牧飼育の農場からの1ブランドのみに限定しており、またその牛乳の価格も一般の人が比較的購入しやすい価格を実現している。

つなぎ飼いフリーの牛乳を手に入れるのが難しい日本において、消費者に良いものを届けることに繋がっており、また良い取り組みをする生産者を支えることにもつながっている。都市部では過去には放牧をしていたという酪農場もつなぎ飼いに変えていってしまったが、もしもこのような小売店が近くにあったならば、その地域の生産者は、放牧飼育を諦めずに済んだのではないだろうか。

小売店の課題のひとつに、必ず複数の種類を揃えて、常時安定供給するという売り方が、良い商品を導入しにくくし、逆に悪い慣行を継続させているというケースがある。安定供給できないから導入できないなどの言い訳は、話し合いの際にはよく聞くものだ。

あいコープみやぎは、認めたものを1種類としている潔い売り方をしており、生協やその他スーパーの中でも他には見られない。

■いつか世界を追い抜くことを夢見て・・・

アニマルウェルフェアへの取り組みの姿勢を明確にした企業は増加したが、具体性がないことや、日本政府の唱える拘束していても福祉が保てるという「日本型アニマルウェルフェア」におさまり、拘束飼育などのひどい慣行をなくす姿勢が見られないケースが多かったのは残念であった。

他にも、植物性タンパク質を増やす取り組みは各社で見られ、候補には多数上がったものの、社会に与える効果の不足という理由とともに、目的に社会課題への解決が含まれていないケース、またステークホルダーとの対話の姿勢がないケースもあり、見送った。

しかし、希望を感じられる一年であったことは間違いがなく、今年度の企業の取り組み、躍進に期待したい。