【連載】企業と人権、その先へ(2)

カゴメが、新疆ウイグル自治区で生産されたトマト加工品の取扱いを今年中に中止すること、また、京セラが、取引先に強制労働への関与が指摘される中国の企業グループが含まれていたとして、調達先を切り替えることをそれぞれ発表した。これらの企業の対応は、ビジネスと人権に関する指導原則で求める企業の人権尊重責任を果たすことができず、取引継続が人権侵害への加担、助長につながるという判断に基づく。(佐藤 暁子・弁護士)

一方で、会長が人種差別発言を繰り返しているDHCに関しては、高知県南国市が包括連携協定を解消すると発表したものの、DHC商品を置いている大手コンビニは今なお取引を継続しており、見直しに関するコメントも見受けられない。

企業による取引停止の対応については、「取引を停止すると働いている労働者の生活に影響が出るのでは」「自社が取引を停止したとしても、結局、人権を気にしない他の取引先との取引が続くだけでは」といった意見が聞かれる。

確かに取引停止の影響がより深刻なのは経営者よりも労働者であることが多く、そして利益ばかりを追求する企業が即座に新たな取引相手として現れること、いずれも十分可能性がある。しかしそれでもなお、取引の停止が必要な場面がある。

指導原則は、取引先に人権リスクがある場合でも、原則として「エンゲージメント=建設的な対話」を行い、その人権リスクを改善するよう働きかけることを求めている。つまり、企業は自社のレバレッジ(影響力)を活用し、人権リスクを最小化にする責任も負う。どれだけエンゲージメントを行なったとしてもそれが不可能な場合に至って初めて、最後の選択肢としての取引停止を検討することになる。

さらに、新疆ウイグル自治区において指摘されている強制労働は、そもそも労働環境が国際人権基準を遵守したものではないことに加え、ウイグル族に対する思想教育も実施されているとの証言もある。

貧困対策のために必要ではないかという意見もあるが、それは国家が社会保障政策等を通じて実施すべき義務を負うものであり、強制労働によって基本的人権を侵害しつつ、人々の生活の維持を図るというのでは本末転倒である。

また、自社の利益だけを優先してこのような状況を利用する企業がいるとしても、そのような行動は許容しないというメッセージを皆で発信することが重要である。取引を継続することは、このような人権侵害も許されるという誤ったメッセージを発することに他ならない。

一方で、取引停止が与える影響力は大きいため、ステークホルダーとの対話に基づき判断することが重要である。今回のケースでも、比較的早い段階に取引停止を決定したパタゴニアなどは、労働組合やNGOといったステークホルダーとの対話を行なっていることもウェブサイトで公表していた。

さらに、企業は、取引停止で終わるのではなく、なぜそのような事態に陥ったのか原因を検討し、再発を防ぐために、取引開始時の人権デューデリジェンスをより慎重に行うなど対応すべきである。

取引継続がどのような人権リスクに、どのように影響を与えているか、企業は常に意識し、評価し、そして具体的な行動に反映することが、ビジネスと人権の取り組みの具体化に向けた鍵である。