紛争下の子どもの権利侵害が過去最多、前年比21%増

記事のポイント


  1. ユニセフは、重大な子どもの権利侵害が過去最多の3万2990件に上ったと発表
  2. ガザやスーダンなどで起きている紛争の影響で、前年比21%増加した
  3. 世界ではSDGsの達成を目指しているものの、子どもたちの環境は深刻だ

ユニセフ(国連児童基金)はこのほど、重大な子どもの権利侵害が過去最多の3万2990件に上ったと発表した。ガザやスーダンなどで起きている紛争の影響で、前年比21%増加した。SDGs(持続可能な開発目標)の達成も危ぶまれている。(オルタナ副編集長=吉田広子)

自宅で寝ている間に爆撃に遭い、右脚を切断された4歳のシラちゃん (ガザ地区、2024年5月24日撮影) © UNICEF_UNI589800_Subieh
自宅で寝ている間に爆撃に遭い、右脚を切断された4歳のシラちゃん (ガザ地区、2024年5月24日撮影) ©UNICEF_UNI589800_Subieh

ユニセフのテッド・チャイバン事務局次長は、国連安全保障理事会の公開討論会で、「イスラエル・ガザ戦争が始まって9カ月が経つが、ユニセフをはじめとする人道支援団体は、助けを求める子どもたちに支援を届けることに苦闘している」と話した。

パレスチナ自治区ガザ地区の境界線は、イスラエル軍が管理しているため、支援物資の搬入や配布が困難を極めている。急性栄養不良に陥る子どもたちも急増しているという。

スーダンでは現在、世界最大の子ども避難民危機が起きている。1年以上にわたる戦争の後、推定460万人の子どもが国内外に逃れ、重大な権利侵害行為が約5倍も増加した。2023年だけで紛争当事者によって1244人の子どもたちが殺傷されたという。

コンゴ民主共和国では、東部で紛争が激化したことで、700万人が家を追われ、2003年以来最悪の避難民危機が発生。国連は2023年に女児に対する性暴力行為を281件確認したとする。

「殺され、傷つけられる子どもたち、性的暴行などの性暴力を受ける子どもたち、人道支援を妨げられる子どもたちが著しく増えている」(チャイバン事務局次長)

国連が公表したSDGsに関する年次報告書2024年版によると、評価可能なターゲットのうち、2030年までに達成できる見込みがあるものは、17%に過ぎない。特に、目標1(貧困)、目標6(水と衛生)、目標16(平和と公正)での進捗が大幅に遅れている。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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