10年前の2011年、大学卒業後に起業した23歳の若者が「ソー活」という新しい就活サービスを立ち上げ話題を集めました。ソー活とは、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディア(SNS)を使った就職活動のことで、今では当たり前になりましたが、10年前は、「より個人/企業が分かる」と評判になりました。(オルタナS編集長=池田 真隆)

エシカル就活を立ち上げた勝見仁泰さん(右から2番目)、同世代の仲間とサービスを開発した

時は流れて、2021年5月。22歳の現役大学生が、SNS型の新しい就活サービスを立ち上げました。サービス名は「エシカル就活」。社会課題の解決に取り組む企業と就活生をつなげるプラットフォームです。

学生はSDGsを経営に落とし込んだ企業の最新動向を知れて、企業は気になった学生に直接コンタクトを取ることができます。

エシカル就活を立ち上げたのは、高千穂大学経営学部4年の勝見仁泰さん。1998年生まれのZ世代の勝見さんは、Allesgood(東京・杉並)という会社を設立しました。

いまは勝見さんに共感した同世代の学生たちが集まり、各自がマーケティングや戦略立案、プロダクト開発など得意分野で能力を発揮しています。

エシカルを旗印に起業した学生と聞いて、イギリスでエシカルを広めることに一役買った学生フリーペーパー「エシカルコンシューマー」を想起しました。エシカルコンシューマーは、マンチェスター大学に通っていた3人の学生が立ち上げたフリーペーパーで、企業や製品のエシカル度を独自の指標で測定しました。

勝見さんたちが立ち上げた「エシカル就活」の特徴は、社会課題を軸に企業を探せること。「気候変動」「ダイバーシティ」「教育」「貧困問題」など気になる課題を選ぶと、その課題に取り組んでいる企業が表示される仕組みです。ニュース機能もあり、求人を募集している企業の最新のサステナビリティニュースを配信しています。

学生は企業の投稿に、SNS感覚で、コメントや「いいね」することができ、その反応を見た人事担当者から気になる学生に直接コンタクトを取ることができます。まだローンチしたばかりなので、掲載企業数こそ多くはないですが、丸井グループやIT企業のメンバーズなどが登録しています。

掲載する企業の基準について、勝見さんは「B corp(ビーコープ)を参考にしています」と言います。B corpとは、米国の非営利組織B Lab(ビーラボ)が2012年から運営する認証制度です。環境・労働・経営面などの項目で厳しい条件をクリアした企業のみが認証を受けることができます。社会的な企業の認証制度の中では、「厳しい基準」で知られます。

B corpの意見をもとに、人、地球、社会などの領域で独自基準に照らし合わせて、掲載するかどうかを決めるといいます。

外部の識者からのアドバイスも参考にします。アドバイザーは、一般社団法人エシカル協会代表理事の末吉里花さん、元パタゴニア日本支社長の辻井隆行さん、国際基督教大学教授の布柴達男さんの3人。さらに、Z世代からの声や実際に経営者との対話を繰り返して、その企業の姿勢を見極めます。

掲載基準にここまで慎重になる背景には、SDGsウォッシュ対策があります。SDGsウォッシュとは、「SDGsに取り組まないで、やったふりをすること」を指します。

SDGsはトレンド化しており、多くの企業が「SDGsに取り組んでいます」と声を挙げます。しかし、その中には、SDGsウォッシュな企業が混ざっていることが少なくないのです。勝見さんたちは、そうしたSDGsウォッシュな企業は掲載しないように目を光らせています。

見極めるポイントは、「SDGsを目的化しているかどうか」と言います。「SDGsは2030年までにサステナブルな世界をつくるための世界共通の目標。本当にSDGsに取り組んでいる企業は、指標やツールとしてとらえている。SDGsに取り組むことが目標になっているとSDGsウォッシュな匂いがするので注意が必要です」。

一方で、SDGsウォッシュな就活生もいると言います。SDGsを掲げる企業が増えたように、就活生も自己アピールの際にSDGsを強調するようになりました。勝見さんは、「SDGsを掲げているだけで、行動が伴っていない就活生もいる。企業からすると、学生側の取り組み具合も見ているので注意しなくてはいけません」。

では、企業からSDGsウォッシュと見られないために就活生はどうしたらよいのでしょうか。勝見さんは、「社会問題の解決の一部になっているか、そのために何ができるのか、このマインドを持つことが必要です」と話します。

このマインドがない状態で、企業にサステナビリティの取り組みをつっ込んで聞いても、口だけという印象を与えるか、時には門前払いをくらってしまうこともあるといいます。また、ビジネスとして社会課題の解決に取り組むことを理解することも大切だと話します。

「ビジネスをツールとして、社会課題の解決に活かすことの意味を改めて考えてほしい。企業人とアクティビストは役割が違います」

勝見さんは、企業と学生お互いが本音を話し合える関係をつくり、「自分のパーパスと企業の価値をすり合わせることができる場にしたい」と言葉を強めます。そう話す背景には、就職活動時に、社会課題への意識を隠してしまう学生を多く見てきたことがあるとのことです。

「就活をしている時や社会人になって会社に入ると、学生時代に活動していた思いや社会課題への意識を隠そうとする人が多いです。社会課題の解決をライフビジョンに掲げている人が、個性を捨てて働かざるを得ない状況を変えたい」

確かに、取材をしていると、面接などで学生時代に社会的な活動をしたことをあえて話さない学生によく会います。そのような活動は面接官に「厄介者」のように見られてしまうことを恐れていました。就活支援をする大人からも、「入社して、ある程度のキャリアを積んでから、社会的な取り組みは始めなさい」とも言われるとのことでした。

勝見さんたちが挑むエシカル就活のソーシャルインパクトは、まさにこうした就職活動を変えることにあると思います。エシカルをベースにしたプラットフォームでは、学生は素直にこれまでの活動と価値観を表明でき、企業とのマッチングが図れます。エシカルが就活の新しい指標になることを期待します。

エシカル就活