「クラウドアイランド」目指す山形の小さな島

日本の離島では人口の減少が止まらず、少子高齢化、過疎化の縮図とも言える実態がある。そんな中、山形県唯一の離島を舞台に斬新な方法で島の活性化に取り組む企業がある。合同会社とびしま共同代表の松本友哉さんと役員の小川ひかりさんに話を聞いた。(山口勉)

「クラウドアイランド」を目指す飛島

日本には6852の島がある。そのうち人が住んでいる有人島は416(北海道・本州・四国・九州・沖縄本島を除く)だ。島の多くは人口減が続き、このまま行けば遠くない将来、無人島になってしまうという島もある。

山形県にある飛島もそんな島の一つだ。飛島の人口は現在約200人だが、このままいくと10年後に100人、20年後にはゼロになるという試算もある。合同会社とびしまは、2013年3月に設立した。

ーーまず始めに飛島に来た理由を教えてください。

(松本)「大学時代、震災以降ローカルに興味を持ち『緑のふるさと協力隊』制度を新卒1年目の進路に選びました。そして、全国の派遣地から飛島を希望しました。飛島のことは知らなかったですし、あまり調べずに選びました。」

「希望した理由は『なんとなく』で、強いて言えば、島に行けば逃げ場がなくなる、つまりやるしかない状況に自分を追い込みたかった、ということでしょうか。」

(小川)「山形県の内陸部でさくらんぼと田んぼに囲まれて育ったので、海に対する憧れがありました。」

「大学で文化人類学を学んだのですが、調査プロジェクトで初めて飛島を訪れ、漁村の雰囲気がとても新鮮で楽しかったのを覚えています。何もかもが目新しくて、また、初めて本格的に民俗学的調査をした場所として思い入れがある場所だったからだと思います。」

「島というと特別な感じを持たれるかも知れませんが、私にとっては、就職で東京に行くのとあまり変わらない感覚です。」

ーー離島は日本の少子高齢化、過疎化の縮図とも言えますが、現在の島の状況をどのように見ていますか。

(小川)「まさに日本の課題の先進地だと思います。飛島の人口のピークは1940年でした。日本の人口のピークは2006年で、飛島は70年も早く人口減少社会に突入しました。だからこそ、これから飛島で何をしていくかが日本の課題解決につながっていくと思います。」

ーー飛島の魅力を教えてください。

(小川)「飛島のよいところは狭いがゆえに海も山も歩いてすぐ行けることです。買い物をするお店や娯楽施設などがなく、一見『何もない島』ですが、海あり山あり、美味しい海産物や夕日、星空、個性的な島民など『何でもある島』です。」

「通年で何かしら海産物がとれます。3〜4月にわかめがあがると春が来たと感じ、1年のスタートを切るように思います。」

「6月下旬になるとサザエが解禁になり、毎日、日課のように行く人もいます。トビウオも初夏の魚ですが近年は不漁が続いています…。アワビは獲れる人が少なく、飛島でも貴重品です。『アワビのこみそ煮』が飛島最強の料理です。」

――「クラウドアイランド」とはどんな構想なのでしょうか。

(松本)「島内外の人が繋がり、プロジェクトを実施する『とびしま自治会』、オンラインツールを活用して協議し、企画を生み出す『とびしま協議会』、プロジェクトで生まれた利益や人材を蓄積する『とびしま財団』の3つの軸を中心にした仕組みです。」

「コンセプトは『どこでも・だれでも・しまびと』です。様々なアイランド(コミュニティ)が重なる場がクラウドアイランドです。」

「飛島のコミュニティをリ・デザインして、リアルに加えてオンライン上に構築します。場所や所属を超えて全国各地の『しまびと』が繋がる場にしたいと考えています。」

「現在ウェブサイトの『Cloud Island』やSNSのスラックでオンラインコミュニティを運営しています。コミュニティには現在約150名の『しまびと』がいます。また不定期ですがZOOMでのウェビナーも開催しています。」

「こうした関係も含めて島と関わる人が増え、島の資産を広く活用してもらうことで、持続的な島になることを目指しています。」

ーー「クラウドアイランド」の発想はどのように思いついたのですか。

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山口 勉(オルタナ副編集長)

大手IT企業や制作会社で販促・ウェブマーケティングに携わった後独立。オルタナライターを経て2021年10月から現職。2008年から3年間自転車活用を推進するNPO法人グリーンペダル(現在は解散)で事務局長/理事を務める。米国留学中に写真を学びフォトグラファーとしても活動する。 執筆記事一覧

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キーワード: #ESG経営

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