環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京・渋谷、RAN)と熱帯林行動ネットワーク(東京・渋谷、JATAN)は7月8日、明治の東京五輪ライセンス商品「チョコレートスナック」に使われるパーム油調達が東京五輪「持続可能性に配慮した調達コード」に違反した疑いがあるとして、開幕直前、東京2020組織委員会に通報を行った。(山口 勉)

インドネシア「ルーセル・エコシステム」内のシンキル・ベンクン熱帯低地林地域。パーム油生産の農園開発のために排水され、火入れで皆伐された泥炭林 ©Nanang Sujana / RAN

通報の対象は、東京2020大会スポンサーである「明治」が2019年7月に販売開始した東京2020公式ライセンス商品「チョコレートスナック」だ。

東京五輪「持続可能性に配慮した調達コード」と「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」では、法令遵守、環境保全、先住民族等の権利尊重の基準を満たした形での生産を求めている。

しかし、RANが2019年に発表した「ルーセル・エコシステム」での調査事例を元に分析した結果、明治のパーム油サプライチェーンには現地での違法農園開発や、泥炭地および熱帯林破壊、地域住民の土地権侵害などに関与する企業が含まれている疑いがあることが明らかになった。

「ルーセル・エコシステム」はインドネシア・スマトラ島にある熱帯雨林で、世界クラスの生物多様性のホットスポットだ。

科学的に記録されている最も古く、生命豊かな生態系の一つで、約260万ヘクタールの広大な地域に、絶滅危惧種のスマトラゾウ、サイ、オランウータン、トラが共存する地球上で最後の場所だ。

しかし、ルーセル・エコシステムは危機に瀕している。インドネシアの国家法の下では保護対象であるにもかかわらず、パーム油、パルプ、紙のための植林や、道路、エネルギー事業、違法伐採、密猟、鉱山業が、生態系全体と森に依存して暮らす人々の食料や水、生活を脅かしている。

2021年6月にも、森林破壊に関与して問題となっているインドネシア現地企業からのパーム油が日本を含むサプライチェーンから排除できていないことが判明した。

RANなどによると、このような違反事例が起こる背景には、五輪パーム油の調達がRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)などの認証制度に依存している現状があるという。

RSPOでは非認証油の混入が可能な「マスバランス方式」も活用可能で、東京五輪の調達コードや調達基準を満たしていないパーム油が利用されるリスクを排除できない。

明治をはじめ日本企業は、非認証油が混合されているRSPO「マスバランス」方式のパーム油を調達していることから、サプライチェーンで起こる問題を防ぐことができていない。

パーム油の利用が本格化する開幕を前に、東京五輪の調達基準の不足点を顕在化させることも今回の通報の目的だ。

オルタナ編集部は、今回の通報について、明治に対して取材を申し込んでいる。明治からは「関係部署へ確認中で、確認でき次第回答する」との連絡があった。

【7月19日追記】

明治から回答があったので追記する。

東京五輪「持続可能性に配慮した調達コード」と「持続可能性に配慮したパー ム油を推進するための調達基準」に違反する可能性があることの認識について、明治広報部は「大会組織委員会の「持続可能性に配慮した調達コード」と「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」にてらし、大会組織委員会に確認の上、発売した」と答えた。

また、RSPOの「マスバランス方式」では非認証油の混入が可能なため、森林の違法伐採や地域住民の土地権侵害、生活環境破壊などにつながる可能性が否定できないことについて、「当社としても、人権や環境に配慮した持続可能な調達は、重要な社会課題であると認識している。

パーム油については、RSPO 認証(マスバランス方式)100%への切り替えの早期実現(2023 年度まで)に加え、トレーサビリティの強化も推進する」との見解を得た。

通報者には当2団体のほか、「ルーセル・エコシステム」が含まれている。「ルーセル・エコシステム」は、インドネシアにある熱帯雨林を指す。法人ではなく、地域名だが、現地で生じている森林破壊などの当事者であるため通報者に加えられた。