新型コロナの感染拡大が続くフランスでは政府が8月9日、「ワクチンパス」の適用範囲をカフェ・レストラン、病院、大型商業施設に拡大した。違反者には135ユーロ(17500円)の罰金が課される。これまでは50人未満の文化・スポーツ施設は対象外だったが、9日から人数枠を廃止した。ワクチンパス拡大は映画館、スポーツクラブなどに打撃を与え、カフェも閑古鳥が鳴いている。(在パリ編集委員・羽生のり子)

■「ワクチン証明書」か「陰性証明書」提示を義務付け

映画館は5月19日から営業を再開したが、7月21日以降、「ワクチン接種完了証明書」「P C R検査または抗原検査の陰性証明書」のどちらかを提示できないと入場できなくなった。陰性証明書は48時間以内のものが必要だったが、検査機関の混雑を緩和するため8月7日、72時間以内に変更した。

ワクチンパスが必須なら、観客が激減する可能性が高い。そこで映画館が考えた方策が、法律で規定された人数制限を利用することだった。50人以上の施設でワクチンパスが義務なので、49人までなら入れても良いと解釈したのである。

こうして独立系映画館や地方の小さな映画館が1室49人制を取った。ワクチンパスを導入した映画館は観客数が60〜70%減少したが、この方法を取った映画館はほとんど影響を受けなかった。

パリ郊外モントルイユ市の映画館「ル・メリエス」は、79席から318席まで6室ある複合映画施設である。夜は満席になることもあるため、パスを要求するのは18時以降で、それより前は1室49人までとした。筆者は昼の回に2度行ったが、いずれも観客は20人前後だった。

ところが9日以降は、昼間から入口にQRコードを読み取る係員を置くようにになった。49人制をとっていた映画館は、この日から客足が減ったという。中部カオール市の映画館では上映回数を半減せざるを得なくなった。

■美術館は5月の再開以降、予約制に

美術館は5月19日の再開以降、予約制になったので、ワクチンパス義務化で急に美術館行きが不自由になった印象はない。

深刻なのは、6月19日に9ヶ月ぶりに営業を再開できたスポーツクラブだ。その1カ月後に50人以上の施設でワクチンパスが必要になったからだ。

地方ラジオ局の連絡網「フランス・ブルー」によると、7月21日からパスを義務付けた北部のスポーツクラブでは、利用者が10分の1に激減し、毎日2〜3人が退会している。

また、ラジオ局「フランス・アンフォ」は「北東部ランス市のスポーツクラブがワクチンパスの義務化で会員の60%を失い、2021年は300万ユーロ(3億9000万円)の売り上げ減になると予想をしている」と報道した。

■賑わっていたカフェのテラスはガラ空きに

カフェやレストランでは、テイクアウト以外の客はワクチンパスがないと入れない。ワクチンパス導入直後、各地で大きなトラブルはほとんどなかったようだ。筆者の住むパリ郊外では、前週まで賑わっていたカフェのテラスはガラ空きになった。

閑古鳥の鳴いているカフェのテラス。中にも客は入っていない。

カフェ・レストラン・ホテル・バーの業界団体「U M I H」によれば、レストランの客は15−25%減った。ワクチンパス導入で売り上げが不安定になるため、同団体は、政府にコロナ禍支援金の支払い期間の延長を要求している。