海外の森林で伐採された大量の木材が「バイオマス燃料」として発電所で燃やされている。森林の生物多様性や気候変動への影響が大きいとして、日本と韓国の環境NGO(非政府組織)12団体が、両国首脳に宛てた共同声明を発表。両国で加速する木質バイオマス発電に、「NO!」を突きつけた。(オルタナ編集委員 栗岡理子)
■木質バイオマス利用の拡大に警鐘
共同声明はバイオマスエネルギーの大量使用問題に関して世界中の環境団体が立ち上がる「ビッグバイオマス国際行動デー」に合わせて行われた。両国のNGOは、両国政府が2050年までに二酸化炭素の排出ネットゼロを達成すると公約したことは評価しつつも、発電のために輸入した木質バイオマス利用を拡大させることは、かえって気候危機を悪化させることになると警鐘を鳴らした。
この声明では、クリーンで再生可能なエネルギーを動力源とする低炭素社会への移行に、輸入木質ペレットを燃焼させるバイオマス発電は貢献しないことが指摘された。両国の木質バイオマス発電が急増する過程で、逆に二酸化炭素の大気中への放出が増える可能性があるという。
光合成によりCO2を吸収して成長する木質バイオマス資源を燃料とした発電は、「京都議定書」ではCO2を排出しないものとされていた。しかし、燃やされて放出されたCO2が森林に再生されて炭素を固定するには数十年を要するという。日韓両国の木質バイオマス発電の急増は、パリ協定で決定された短期的な排出削減目標に適合しないことになる。
■新規の木質バイオマス発電所の停止を要請
共同声明を発表したNGOは、バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)、地球・人間環境フォーラム(GEF)、Solution for Our Climate (SFOC) など日韓の12団体。
これらの団体は、岸田文雄首相と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対し、両国が発電のみの木質バイオマス発電所の新規建設・新規稼働を直ちに停止し、同時にすべての既存バイオマス発電所がパリ協定の目標に沿った厳しい排出規制をクリアすることなど、包括的な環境基準への適合を確保することを求めた。