COP26第6日目に行われたフライデー・フォー・フューチャーの抗議運動には、先住民の若者の姿も見られた ©francis mckee (CC BY 2.0)
COP26第6日目に行われたフライデー・フォー・フューチャーの抗議運動には、先住民の若者の姿も見られた ©francis mckee (CC BY 2.0)

英グラスゴーで開催されていたCOP26で「森林と土地利用に関するグラスゴー宣言」が発表された。2030年までに森林破壊をゼロにすることを誓約するものだ。気候危機の最前線にいる先住民と地域社会は、単なる気候危機の保護対象ではなく、森林管理に重要な役割を果たしていることが明記された。COP26では、最低でも先住民に約2000億円の資金が直接提供されることが決定し、先住民らを気候変動対策の議論の中心にすえる第一歩と見られる。

先住民が「気候変動難民」に

地球温暖化がもたらす暴風雨や森林火災、洪水などといった異常気象は今までになかった頻度と規模で、世界中の人々と自然環境を脅かしている。特にこの影響を受けているのが、先住民だ。

どの先住民も伝統的に土地、海、天然資源と密接な関係を持つ。自然に深い敬意を払い、自分と切っても切れない存在と考える。食料や薬、建築材料など、暮らしに必要なものを依存するだけに留まらない。

国連によれば、関係が密なだけ、先住民が受ける気候危機の影響は深刻だ。生活物資が入手できなくなり、さらには人権侵害、差別、失業といった社会的な問題にまで発展する。中には、移住を強いられる人も出てくる。

「気候変動難民」として、先祖から受け継いできた自然環境を離れなくてはならない場合の精神的ダメージは想像にあまりある。言語や文化、習慣も衰退していく。

「森林と土地利用に関するグラスゴー宣言」が発表されたCOP26初日、開会式でのスピーチには、先住民の代表も参加した。スピーチの要点は共通しており、気候変動に対応する機会を先住民に与えるよう求めていた。

ニュージーランドの先住民、マオリの環境活動家、インディア・ローガン・ライリーさんは、「私たちは、化石燃料を地中にとどめ、化石燃料採掘の拡大を阻止している。私たちは、温室効果ガス排出量を増加させるようなインフラを中止させ、見せかけの解決策にノーと言っている。

実際、米国とカナダだけでも、先住民の抵抗によって、年間排出量の少なくとも4分の1に相当する温室効果ガスが排出されるのを阻止したり、遅らせたりしている。私たちの活動は効果を挙げている」と、厳しい表情で説得した。

ブラジル・アマゾンからの先住民環境活動家、チャイ・スルイーさんは、「先住民は、気候変動という緊急事態の最前線にいる。ここで下される決定の中心にいなければならない。私たちには世界の終わりを先延ばしにする良策がある」とシンプルな言葉で訥々と訴えた。

アマゾンの先住民環境活動家、チャイ・スルイーさん © Karwai Tang/UK Government (CC BY-NC-ND-2.0)

必要なのは「資金」と「権利」

COP26第三日目には、フォーラムも行われた© Dean Calma/IAEA (CC BY 2.0)

COP26の初日、先住民や地域社会の人たち(IPLC)に、最低でも17億米ドル(約2000億円)の資金が直接提供されることが決まった。

この大半は、英国、米国、ドイツ、ノルウェー、オランダの各政府からだ。そのほかにも、資金提供を行う財団複数が6億米ドル(約680億円)を拠出している。これは土地保有権に関するシステムを強化し、IPLCの土地保有権と、資源の権利を擁護することを目的に、2021年から2025年にかけて提供される。

しかし、目的達成には、これだけでは足りないと先住民の代表は指摘している。レインフォレスト財団ノルウェー (RFN)が発表した報告書、「フォーリング・ショート」によると、熱帯諸国におけるIPLCの権利や森林管理を対象に援助を行う、国際的な資金供与者からの資金は、過去10年間で毎年平均2億7000万米ドル(約228億円)と少ない。

これは同じ時期に提供された、気候変動緩和のための政府開発援助(ODA)の資金 の1%にも満たないそうだ。世界資源研究所は世界の土地の半分、生物多様性の80%がIPLCによって管理・保護されていると社会への貢献ぶりを推測する。それにも関わらず、直接IPLCにもたらされる資金は不足している。

グローバル・アライアンス・オブ・テリトリアル・コミュニティ―ズ(GATC)は、世界の60%を占める、世界24カ国の先住民の共同体の代表組織だ。

その求めに応じ、権利と資源イニシアティブ(RRI)、ウッドウェル気候研究センター、レインフォレスト財団米国(RFUS)が合同調査し、COP26で発表したのが、「シグニフィカンス・オブ・コミュニティーヘルド・テリトリ―ズ・イン・24カントリーズ・トゥ・グローバル・クライメート」という報告書だ。

それによると、IPLCがいるエリアは9億5800万haで、そこには2500億t以上の炭素が含まれているという。

しかし、IPLCが法的に認められ、保有しているのは、この面積の半分以下。残りの約半分は、1300億tの炭素ともども森林破壊に遭う危険にさらされていることになる。先住民が必要としているのは資金だけでなく、土地保有権なのだ。

先住民の管理で森林伐採率は2分の1に減少

GATCの総合コーディネーター、トゥンティアック・カタンさん © Karwai Tang/UK Government (CC BY-NC-ND-2.0)

IPLCは、資金と権利を求めるばかりではない。実際、森林伐採率や生物多様性の損失を減らし、CO2の排出を回避している。

2021年3月に発表になった、「フォーレスト・ガバナンス・バイ・インディジネス・アンド・トライバル・ピープル」という報告書がそれを証明する。国際連合食糧農業機関(FAO)と、 ラテンアメリカ・カリブ先住民開発基金 (FILAC)によるもので、過去20年間に発表された300以上の研究を再検証した。

その結果、先住民所有の森林の方が、同じエリアにある、ほかの人々が管理する森林より、一般的によく保護されていることが科学的に示された。

例えば2000年から2012年の間に、ボリビア、ブラジル、コロンビアのアマゾン川流域エリアの森林伐採率は、生態系が類似するほかの森林の伐採率の2分の1から3分の1にすぎなかった。それに伴い、同3カ国では、年間4280万~5970万MtのCO2を削減している。これは900万~1260万台の車が1年間生産・使用されなかったのと同等だ。

先住民が住む4億400万haのうち、政府が先住民の共有財産もしくは使用権を認めているのは、約2億6900万ha。政府の承認を受けた土地の場合、環境には大きなメリットがある。土地所有権を与えるのに必要な費用はわずか6USドル(約680円)から45USドル(約5000円)と非常に安い。

同報告書では、森林ガバナンスにおいて先住民が果たす役割を強化するために、共同体の土地所有権の承認を強化し、先住民らが環境保護促進を実践できるよう投資を呼びかけている。

投資・金融の仕組みの改正を

IPLCに17億米ドル(約2000億円)を超える資金が直接提供されることが決まった日、GATCは「シャンディア・ビジョン」を発表した。これは、世界の気候変動対策としての投資・金融の仕組みを再構築し、IPLCが援助資金を受け取れるようにするための資金調達のエコシステムだ。

RFNの報告書、「フォーリング・ショート」によれば、土地所有権と森林管理のための資金は、そのほとんどが規模の大きな仲介業者やプログラムを介するため、IPLCに届くのは、資金のごく一部にしか過ぎないという。

こうしたプログラムの実施内容にIPLCの組織名を明記していたのは約17%。土地所有権や森林管理における開発援助の1つとして、IPLCを優先する援助資金供与者はまだ少ない。

エクアドルの先住民、シュアールのリーダーで、GATCの総合コーディネーターのトゥンティアック・カタンさんは、資金の供給方法を地域ごとに変えれば、環境にとって、より大きなメリットになり、人間もその恩恵を被ることができると話す。

アマゾンで最大の先住民団体であり、9カ国のグループを代表するアマゾン流域先住民族調整組織(COICA)の気候・生物多様性担当責任者であるレイズ・ぺレスさんはこう訴える。

「私たちが行っている炭素削減は、昨日今日に始まったことではない。7000年前から行われてきたことなのだ」