林野庁の近年の主張は、「今が伐り時」である。戦後植えたスギやヒノキが樹齢50年を越えて木材として使えるサイズになってきたうえ、高齢化した樹木は二酸化炭素の吸収が減るから植え直すことが森の活性化につながる─だから木材を増産しようというのである。(田中 淳夫=森林ジャーナリスト)

伐採後、約7割が再造林されていない

同じ理屈を持ち出して、木材を使えば炭素を固定し大気中の温室効果ガスを削減するからSDGsに合致している、と説明されることも多い。

しかし樹木を伐れば、二酸化炭素を排出することにならないのか。その点は、木を伐った跡地に再造林すると、その成長時に二酸化炭素を吸収するからだとする。だから伐った木を建築などに使えば木材の形で炭素を固定したことになるし、燃やしても後に育った木の分で相殺してカーボンニュートラルだと認められる。

木材を燃料にして化石燃料を使わなければ、その分二酸化炭素を削減したことになるというわけだ。だが、こうした理屈には不都合な真実が隠されている。

まずカーボンニュートラルになるためには、伐った木と同じ堆積の木が育たねばならない。伐った木の樹齢と同じ年月が経って、ようやく二酸化炭素の収支はゼロになるのだ。何十年、ときに100年以上も先の話だ。

だがバイオマス発電で燃やせば一瞬でなくなり二酸化炭素を排出する。住宅の建材に使っても、日本の住宅寿命は平均30年あるかないか。100年以上維持される家はごくわずかだ。

それは技術だけの問題ではなく、ライフスタイルの変化によって建て替えやリフォームが行われるからである。すると廃材となった木材は、焼却されるか腐るかして二酸化炭素を排出する。

この期間は、むしろ二酸化炭素は排出増となる。世界が排出ゼロを目指す2050年には、とても間に合わない。

伐採後、約7割が再造林されず