日本が移民受け入れに大きく舵を切ろうとしている。出入国在留管理庁は、外国人の在留資格「特定技能」について、2022年度に在留期限を無くす検討に入った。外国人労働者が増えると、サプライチェーン上で不当な労働条件や人権侵害などのリスクが増える可能性がある。 (オルタナ副編集長・山口 勉)
横行する人権侵害
東京を中心に牛タンなどを扱う飲食店を展開するねぎしフードサービス(東京・新宿、根岸 榮治社長)直営の食品工場で働いていた30代のスリランカ人女性が技能実習期間中に妊娠した。そのことを監理団体の神戸国際流通促進協同組合に伝えたところ、「中絶するか、帰国するか選べ」と迫られた。さらに職場のある埼玉から団体のある神戸まで連れて行かれ、「自分の意志で仕事を辞める」よう強要されたという。
怖くなった女性は職場を逃げ出し、技能実習生など労働弱者の支援に取り組むNPO法人 POSSE(ポッセ、東京・世田谷)に助けを求めた。
監理団体は、技能実習生の募集や受入れ手続きなどを行う非営利団体だ。技能実習生の支援を行うはずが、本人の意思に反して中絶や帰国を迫ること自体が違法行為だ。
「外国人を雇うのであれば、まず最低限、法を順守すること。そして技能実習生を労働力として使う企業とは取引しない、といった毅然とした姿勢も必要だ」と、POSSEの岩橋誠氏は厳しく指摘する。
これはほんの一例に過ぎない。POSSEでは年間500件の相談を扱う。
「特定技能」には1号と2号があり、1号は5年まで在留できるが、更新はできない。2号は5年ごとに更新できる。改正が行われれば、これまで在留資格の更新が認められていなかった飲食料品製造業や、産業機械製造業、ビルクリーニングなどが新たに加わり、14業種に拡がる予定だ。資格を更新すれば事実上、外国人労働者が日本に永住することも可能になる。
外国人の就労は、特定技能のほか、特に技能実習生に対する人権侵害や搾取の実態について多数の報告がある。