【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス(12)

2020年度、54万3372羽の肉用鶏と採卵鶏が、と畜の際、生きたまま熱湯処理され、熱傷死した。どういうことかというと、屠殺の際に頸動脈を切るのに失敗して浅く首を切られ、失血死できず、次の工程である熱湯処理に生きたまま進んでしまったということだ。(認定NPO法人アニマルライツセンター代表理事=岡田 千尋)

生きたまま熱湯処理される様子が内部告発の動画により明らかになった

私達に寄せられた内部からの情報では、逆さ吊りにするためにシャックルに引っ掛けた足が、熱湯に沈められながらビクビクと足を動かす様子が観察されている。結果、熱傷によって皮膚が真っ赤やピンクになる。

英国で同様の事態が判明したことがあるが、その食鳥処理場の経営者は不必要な苦痛を与えたとし、有罪判決を受けた[1]。このときの報道によれば、鶏たちは2分間にわたり熱湯の中で苦しんで死亡したという調査結果が出ている。

事故ではなく未必の故意

これは単なる事故ではなく、防ぐことができるものだ。また日本も加盟するOIE(国際獣疫事務局)は「意識がある又は生きた鳥が、熱湯処理タンクに入ることがないよう、あらゆる努力がなされること。・・・(中略)いかなる場合であっても全脳幹反射が停止するまで、動物に対し熱湯処理又は加工処理を行わないこと」と、強く規定している。

鶏だから仕方ないと検察官や裁判官が恣意的な判断しさえしなければ、日本の動物愛護管理法でも違法行為に当たる。

米国の14倍のずさんさ

英国では前出の通り、これは犯罪として成立しており、あってはならないことになっている。しかし、米国はまだ、この生きたまま熱湯に入れられる問題が残っている。しかし、日本とは全く異なり、着実に改善が進んでいる。

米国の生きたまま熱湯に入れられる割合は0.00469%であるが、日本はその14倍、0.0662%だ。その差はどんどん開いていっている。改善のために、ガススタニングに切り替え、屠殺のフローの見直しがかけられているのだが、日本はそのような動きがない。

それどころか、日本では、鶏を熱傷死させる数がここ数年増えているのだ!

2015年からの推移は以下の通り。

 合計肉用鶏肉用鶏割合採卵鶏採卵鶏割合
2020年度543,372321,6360.044%221,7360.260%
2019年度512,965314,2580.043%198,7070.237%
2018年度508,406296,2970.042%212,1090.247%
2017年度474,665291,8450.042%182,8200.228%
2016年度498,892346,3540.050%152,5380.228%
2015年度415,993279,1950.040%136,7980.165%

採卵鶏のほうが熱傷死させている割合が高い。毎日卵を生まされ、その卵をすべて奪われ、養鶏業者と小売店や飲食店などに利益をもたらした鶏たちの最期が、これである。

議論と分析と改善を

と畜について、日本では議論がなされてこなかった。しかし他国は異なる。見たくないからと目をそらしたりせず、何が失敗の原因になっているのか、改善策があるのか、どこで動物の苦しみが発生しているのかを分析し、改善に活かしている。

2019年にEUは鶏がコンテナに収容されてから死亡するまでの全と畜プロセスを徹底的に調査し91ページに及ぶレポート[2]にまとめた。35のリスクを特定し、福祉への影響を最小限に抑えるための緩和策も提案された。

鶏のと畜をいまだに気絶処理無しで行う食鳥処理場が多く残る日本、どこまで遅れを取るつもりなのだろうか。

鶏を熱傷死させるという動物虐待に加担したくない人は、自分たちが調達したり、購入したり、食べたりする卵や鶏肉が、どのような工程で作られているのかを、目を背けず、見てほしい。

欧米産やブラジル産などの鶏肉は、気絶処理が義務付けられているため、日本産よりは苦しみが少ない。