フォアグラ輸入量10年で94%減、背景に動物愛護

【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス(14)

2021年の財務省貿易統計によると、フォアグラの輸入量が2020年と比較して44%減少、10年前と比較すると94%減少していることがわかった。この背景として、国内でも動物虐待の製造工程を経たフォアグラへの拒否感が広がってきたこと、毎年のように起きる鳥インフルエンザの問題があると見られる。(認定NPO法人アニマルライツセンター代表理事=岡田 千尋)

この2つともが、畜産物の代表する「リスク」である。あまりの残酷さに消費者が拒否することや、豚熱や鳥インフルエンザのような疾病が増え続けていることは企業や投資家にとってリスクにつながる。

■需要の落ち込み

フォアグラが必要であるとするのは一部のフランス料理店やホテルである。高級だと信じられている食材を使うことが顧客満足につながる分野があるのだ。

そういった感覚の客層を持つこれらのレストランは、フォアグラを使いたくなくても経営判断で使うという選択を継続している。

また、珍味を安く取り入れることで、新たな層を取り込みたいとあえてフォアグラを取り入れる倫理観の低い企業もある。これまでも大手ファーストフードチェーンや寿司チェーンなどがこのようなことにトライしてきた。

しかしそのような取り組みは企業価値を高めてくれるわけでも、継続的な利益を生んでくれるわけでもない。なぜなら需要も販売量も右肩下がりで、実際にフォアグラを求める声は小さなものなのだから・・・

(単位 KG) *クリックすると拡大します

■代替する素材の出現

フォアグラが美味しいのかどうかはともかくとして、これに替わる動物を苦しめない「フォアグラ」が出現している。

まず、培養フォアグラが鋭意開発されており、市場に出てくる兆しがある。これは日本でも他国でも複数の企業がトライをしている。

また、植物性のフォアグラが販売されている。Faux grasというかつてフランスで賞をとったものもあるし、その他にもいくつかの種類が売られているようだ。

英国でフォアグラの輸入禁止が議論され始めているが、それに伴いあらたな開発競争をけしかけてもいる。

■嗜好性の変化

物の価値というのは時代とともにどんどん変わる。今、フォアグラのような、誰かの苦しみによって生み出されたものを食べることがグルメであるという考えは変わりつつある。そして、アニマルウェルフェアが高かったり、持続可能な生産がなされていたり、自然農や自然栽培などの本来の味を追求できる野菜であったりと、高級という概念が変わり始めている。

その食べ物の裏にあるストーリーをも含めて味わう時代になっているのだ。企業、レストラン、ホテルは、このような新しい流れをしっかりと把握する必要があるだろう。

chihirookada

岡田 千尋(NPO法人アニマルライツセンター代表理事/オルタナ客員論説委員)

NPO法人アニマルライツセンター代表理事・日本エシカル推進協議会理事。2001年からアニマルライツセンターで調査、戦略立案などを担い、2003年から代表理事を務める。主に畜産動物のアニマルウェルフェア向上や動物性の食品や動物性の衣類素材の削減、ヴィーガンやエシカル消費の普及に取り組んでいる。【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス

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