「世界主要25社の脱炭素目標は怪しい」と欧NGO

「世界の主要な大企業による気候変動対策や温室効果ガスの削減目標は実態に欠け、消費者や行政を惑わすことになりかねない」ーー。欧州の非営利組織2団体が共同でこんな手厳しい報告書を2月7日、発表した。リストには日本でも先進的とされる2社を含み、議論を呼びそうだ。(オルタナ副編集長=山口勉)

「企業の気候変動責任モニター2022」表紙

第1回となる報告書「企業の気候変動責任モニター2022」は、欧州に本拠を置くNGO「ニュー・クライメート・インスティテュート」(NCI)と「カーボン・マーケット・ウォッチ」(CMW)が共同で執筆した。

NCI(ドイツ)は2014年11月設立。気候変動の研究と支援をする非営利組織。CMW(ベルギー)はカーボンプライシングなどを中心に、国際機関やEUでの政策提言の実績を持つ。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の認定オブザーバーも務める。

調査対象は次の25社だ。アクセンチュア(アイルランド)、アマゾン(米)、アップル(米)、BMWグループ(独)、カルフール(仏)、CVSヘルス(米)、ドイツ郵便(独)、ドイツテレコム(独)、エネル(伊)、エーオン(独)、グラクソスミスクライン(英)、グーグル(米)、日立製作所、イケア(蘭)、JBS(ブラジル)、マースク(デンマーク)、ネスレ(スイス)、ノバルティス(スイス)、サンゴバン(仏)、ソニー、ユニリーバ(英)、ヴァーレ(ブラジル)、ボーダフォン(英)、フォルクスワーゲングループ(独)、ウォルマート(米)(アルファベット順)。

「90%以上の脱炭素を実現できそうなのは3社だけ」

報告書によると、調査対象になったグローバル企業25社の温室効果ガス(GHG)削減への取り組みは、実際には「2050年にゼロ」にはならず、「現状比で平均40%程度しか削減できない」と分析した。

さらには「ネットゼロはゼロではない」とし、カーボンオフセットやクレジット取引など炭素削減の手法に疑問を投げかけた。「ゼロエミッション」や「カーボンニュートラル」の目標を設定した25社のうち、確実な手法で90%以上の脱炭素を実現できそうなのは、マースク、ボーダフォン、ドイツテレコムの3社だけだとした。

「グリーンウォッシュ」「抜け穴」など厳しい表現も

このほか、各社の脱炭素目標の内容について、「グリーンウォッシュ」「抜け穴」「都合の悪いデータを除外」「独自の誤った尺度」「ごまかし」「怪しい」などと手厳しく批判した。

日本企業ではソニーなど2社を取り上げた。ソニーについては同社の環境戦略「ロード・トゥ・ゼロ」(2050年までに製品および事業のライフサイクルにおいてゼロエミッションを達成)を調べた。

その結果、「オフセットの活用に関する方針が明確ではない」「目標はすべての範囲をカバーし、100%排出削減目標として掲げたが、どのように達成するのかが十分に明らかでない」などとした。

気候政策に関する情報や分析の提供を行う非営利組織「クライメート・インテグレート(東京・港)」の平田仁子代表理事は、次のように意見を述べた。

「脱炭素への機運が高まるなか、企業の取り組みがどこまで本気なのか見えない部分があった。目標と実態にかなりの乖離があることが明らかになったことは、非常に重要な指摘だ。裏付けのない取り組みは、目標自体を無意味にしてしまう。企業には、目標とのギャップを埋めていく努力がより求められる。」

オルタナ編集部による報告書「企業の気候変動責任モニター」の抄訳(逐語訳ではありません)は次の通り。

報告書の主執筆者「野心的目標を誇張している」

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山口 勉(オルタナ副編集長)

大手IT企業や制作会社で販促・ウェブマーケティングに携わった後独立。オルタナライターを経て2021年10月から現職。2008年から3年間自転車活用を推進するNPO法人グリーンペダル(現在は解散)で事務局長/理事を務める。米国留学中に写真を学びフォトグラファーとしても活動する。 執筆記事一覧

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