米シンクタンク「エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)」はこのほど、JICA(国際協力機構)が支援するマタバリ石炭火力(バングラディシュ)のプロジェクトを中止し、再エネを柱とした電力マスタープランへの移行を提言する報告書をまとめた。国際的な「脱炭素」「脱石炭」の流れの中で国内外の環境NGOからは中止を求める声が上がるが、JICAは「契約済み」を理由に継続しようとしている。(オルタナ編集部・長濱慎)

マタバリ石炭火力プロジェクト(JICAホームページ「ODA見える化サイト」より)

■火力発電の増設と化石燃料の高騰が電力システムを圧迫

IEEFAはオハイオ州レイクウッドにあり、エネルギーと環境に関連する金融・経済問題の研究を行っている。今回の報告書「バングラデシュ電源開発公社の2020〜21年度財務実績」は、国営の電源開発公社の財務状況悪化を指摘し、以下のような要因を挙げる。

●バングラデシュでは送電インフラの整備が遅れているため、2020〜21年度の発電設備利用率は42%に過ぎない。にもかかわらず、電源開発公社は「容量支払」の名目で、稼働していない発電所に膨大な額を支払っている。

●現在建設中の発電容量は12,967MW。24〜25年度末には19,651MWに達し、さらに供給過剰となる。しかも大部分が輸入化石燃料(石炭、石油、LNG)による火力発電で、特にLNGの価格高騰が電源開発公社の財務状況を圧迫する。

電源公社は2022年1月、経営悪化を受けて最大64%の電気料金の引き上げをバングラデシュ政府に申し入れた。これが大きな負担となって国民にのしかかるのは確実だ。

■「低・脱炭素」を掲げながら石炭火力を支援するJICAの姿勢を問う

報告書は、JICAが2021年3月よりバングラデシュの「統合エネルギー・電力マスタープラン策定プロジェクト」を支援していることに着目。同プロジェクトが「エネルギーの低・脱炭素」を掲げる一方で、JICAがマタバリ石炭火力への支援を続けている矛盾点を指摘する。

マタバリ石炭火力は、南東部のマタバリ地区に石炭火力発電所、石炭輸入用港湾などを建設するプロジェクトだ。フェーズ1とフェーズ2からなり、2024年の運転開始を予定している。いずれもまだ本格的な着工に至っておらず、国内外の環境NGOからは中止を求める声が上がるが、JICAは「契約済み」を理由に継続しようとしている。

報告書の著者でIEEFAエネルギーファイナンス・アナリストのサイモン・ニコラス氏は「計画中の火力発電を中止し、長期にわたって経済的に持続可能な電力システムを構築する計画に組み直す必要がある」と、述べる。

バングラデシュ政府はパリ協定の1.5℃目標達成に向け、再エネ導入率を30年までに30%、41年までに40%に引き上げる目標を掲げた。この計画は建国の父で初代大統領ムジブル・ラーマンにちなんで「ムジブ気候繁栄計画」と名付けられた。

まだ建設が始まっていない石炭火力にしがみつくのか、「ムジブ計画」を尊重し再エネを中心とした支援にシフトするのか、どちらが真の国際協力かは明白だろう。