世界共通目標の「カーボンニュートラル」に向けて脱炭素化のレースが加速するなか、サステナビリティを「責任」にとどまらず、「成長戦略」ととらえる企業が相次ぐ。「2050年」よりも早い野心的な目標年を打ち出すことで、ステークホルダーとの連携やブランド・アイデンティティを強化する。中長期の目標を掲げることをリスクだと思い込む企業との差は広がりそうだ。(オルタナS編集長=池田 真隆)

国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は2018年、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるためには2050年頃にカーボンゼロにする必要があると科学的に示した。この報告により、多くの国や企業は2050年をカーボンゼロの目標年に設定したが、それよりも早い野心的な長期目標を掲げる企業が増えてきた。
英製薬大手のアストラゼネカは2021年10月、世界の自社事業所からの温室効果ガスの排出を2025年までにゼロに、2030年までにバリューチェーン全体でカーボンネガティブを目指す「アンビション・ゼロカーボン」目標を発表した。
野心的な長期目標を掲げる企業の中でも、「2025年目標」は突出している。同社日本法人のステファン・ヴォックスストラム社長は、「人々の健康、地球の健康がビジネスの要だ」と言い切る。
気候危機を公衆衛生における「緊急事態」と認識し、政府目標を遥かに越える野心的な目標を設定した。日本では2020年に全購入電力を再生可能エネルギーに切り替え、2022年には自社工場に太陽光パネルを設置、2025年には全営業車のEV化を目指す。
野心的な長期目標を打ち出すことに対して、「リスクを前提に検討していない。あらゆる産業と協業してカーボンネガティブを一刻も早く推進すべきと考えている」とし、脱炭素化が「企業戦略」であることを明確にした。
カーボンゼロの社会を実現するため環境整備に関する意見書の作成を進め、政府やあらゆる業界との対話を図る。CO2の排出量よりも吸収するCO2の量が多い状態を指す「カーボンネガティブ」を最終的なゴールと位置付けた。
■マイクロソフト、2030年に「カーボンネガティブ」