岸田文雄首相は3月2日、ウクライナからの難民を日本で受け入れる方針を明らかにした。NHKや毎日新聞の報道によると、ドイツ、ポーランド両国首脳との電話協議後、難民受け入れに関し「至急、実務を調整する」と記者団に語ったという。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、1日時点でウクライナから66万人の難民が近隣諸国に避難し、「欧州最大の難民危機に陥る可能性がある」と発表していた。ウクライナ政府はこのまま戦闘が続けば、難民の数は450万人以上に上ると推計している。(オルタナ副編集長=吉田広子)
松野博一官房長官は2月28日の記者会見で、ウクライナから逃れてきた人や、ウクライナ侵攻に反対し迫害の恐れがあるロシア人に対し、「難民条約で難民と認められなくても、人道上の配慮が必要と認められる者については、在留を認める」との方針を示していた。
UNHCRは、日本の難民認定手続きについて、次のように説明する(一部抜粋)。
「日本で難民申請を希望する者は、法務省入国管理局に登録し、入国審査官による審査などを経て条約難民として認定される」
「条約難民として認定されると在留資格と法令の範囲内で権利と公共サービスの利用が認められるが、認定されない場合でも、人道的配慮などによる一定の保護、例えば在留資格と就労許可の付与、国民健康保険などのサービスを受けられるケースも増えている」
「難民申請手続きは短くても数か月、また再申請や裁判所での審査を含めると何年もかかることもあり、収容という問題が出てくる」
これまで日本での難民認定率は極端に低かった。2019年は1万375人の難民申請に対して認定されたのは44人(0.4%)、2020年は難民申請者3936人に対して、認定されたのは47人(1.2%)にとどまる。
日本では、ほとんどの人が難民として認定されないため、最低限の生活も保障されず過酷な生活を送っている場合が多い。世界で最も多く難民が発生しているシリアからの難民も、日本では認定されなかった例もある。
政府はウクライナ難民を受け入れる方針を示したものの、対象範囲や具体的な措置、受け入れ人数などは明らかにしていない。