TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の生物多様性版TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は3月15日、自然関連リスクの開示枠組みの草稿版(v0.1)を公表した。目標から逆算するバックキャスティング型のTCFDとは異なり、企業や団体の取り組みを積み上げていくボトムアップ型なのが特徴だ。草稿版のポイントを解説する。(オルタナS編集長=池田 真隆)

TNFDは企業に自然関連リスクの「情報開示フレームワーク」を提供する組織だ。国際NGO WWFやUNDPなどが集まり、2021年6月に発足した。

フレームワークは、18.3兆米ドル超の資産を持つ34人のタスクフォースメンバーが、TNFD共同議長とともに策定している。現時点で300以上の科学機関などがフレームワークの策定を支援している。日本からはMS&ADインシュアランスグループ ホールディングスの原口真・インターリスク総研フェローが参加している。

生物多様性と気候変動に関してはどちらも1992年に国連が枠組み条約をつくった。同時期にできたが、議論する委員やターゲットなどが異なり、これまでは関連性を持って議論してこなかった。

しかし、世界的に人口が増えたことで開発環境が広がり、気候変動だけでなく生物多様性にも甚大な影響を及ぼすようになった。世界経済フォーラムが毎年発表する「グローバルリスク」の2022年版では気候変動と生物多様性がトップ3に入った。

気候変動と生物多様性はコインの表裏の関係になったことで、企業や団体に自然関連リスクへの対応を促すためにTNFDは立ち上がった。

今回の草稿版(v0.1)は今後、3回更新する。次回は22年6月、23年2月、そして、23年9月に最終版をリリースする予定だ。

TCFDと比べて自然関連リスクの管理は難易度が高いとされているが、特徴はボトムアップ型の点だ。TCFDは中長期的な目標を設定して、そこから逆算して施策を考えるバックキャスティング型で考えたが、TNFDは各企業や組織の取り組みを積み上げて考えていく。「TNFDフォーラム」というグループを立ち上げ、このフォーラムに参画した企業と議論して草稿版を仕上げていく。

草稿版によると、TNFDの開示提案は、気候変動と生物多様性の相互関連性を重視している。TCFDの基準を採用し、大まかな開示提案を可能な限り整合した形だ。

自然に対する影響は「ローカル」に大きく出る。そのため、フレームワーク全体を通じて、ロケーションの検討が重要な特徴とした。草稿版では、新たにロケーション別の開示を提案し、市場参加者がロケーション別の自然関連の依存関係、影響、リスクを企業やポートフォリオのリスク管理プロセスにどのように取り込めるかについてのガイダンスを提供している。

今回の草稿版のポイントについて、TNFDフォーラムに参画しているMS&ADインシュアランスグループ ホールディングスはこう分析した。

・気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が策定した気候関連ガイダンスを参考に、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の開示を推奨し、気候関連リスクと自然関連リスクの統合的な開示が可能となるアプローチを採用。
・自然は本質的に場所に紐づくため、ロケーション別の開示を提案。そのために自然関連リスクと機会を評価するための任意のガイダンスとして企業向けのプロセス(LEAP)と金融機関向けのプロセス(LEAP-FI)を提供。
・今後はオープンイノベーションによる意見のフィードバックを経て、2023年9月に最終的な開示枠組にまとめる予定。

草稿版の公開に合わせて、フレームワークの策定を議論するメンバーも募集している。