食品ロス削減の「連携ハブ」担い、こども食堂支援も

■クラダシ(オルタナ69号「アウトサイド・イン、さらに進化・進化」特集先出し)■

クラダシ(東京・品川)は、社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI(クラダシ)」を運営する。賞味期限が近づいたり規格外になったりした食品を企業から仕入れ、最大97%オフで販売し、収益の一部を社会貢献活動に寄付する仕組みだ。2022年2月には新たな社会課題の解決に向けて、こども食堂に食品を提供する実証実験を行った。(オルタナ副編集長・長濱慎)

クラダシの関藤竜也CEO(右)と、事業推進本部の中野奈緒子さん

■協賛企業920社、売上高成長率230%に

「目指すのは、日本で最も食品ロスを削減する会社」、「もったいないを価値に作り替える」、「デコとボコをマッチングさせる」、「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」。クラダシの関藤竜也・代表取締役社長CEOは、さまざまな表現を交えながら目指す方向性を語る。

「『お蔵入り』という言葉がありますね。本来価値があるのに、需給のバランスが合わず日の目を見ない。まだ食べられるのに捨てられてしまう食品を『お蔵入り』させずに、新しい価値を付けて提供したい。そんな思いを、社名とショッピングサイト名に込めました」

関藤CEOは商社に勤めていた1998年〜2000年、赴任先の中国で「規格外」を理由に大量の食品が廃棄されるのを目の当たりにした。これに衝撃を受け、食品ロスという社会課題の解決に持続的に取り組むためにはビジネス化する必要があると考えた。    

周囲の反応は「食いカスで商売などするな」と否定的だった。しかし国連が2000年にMDGs(ミレニアム開発目標)を採択し、関藤CEOは必ず機が熟す時が来ると確信したという。そしてSDGs(持続可能な開発目標)採択が翌年に迫る2014年、クラダシ(当初の社名はグラウクス)を起業した。

ショッピングサイト「KURADASHI」の会員数は、2022年5月末現在で累計約32 万人。22年6月期の売上高成長率は前年同期比230%を記録した。仕入先の協賛企業は累計920社に。当初は「安売りは自社のブランドイメージを傷つける」という反応が大部分だったが、食品ロス問題が注目されるにつれ仕入先の数は着実に伸びている。

サイトの収益の一部は環境保護、海外支援、動物保護、災害支援活動などに寄付。これまでの支援総額は約7500万円にのぼる。2020年からは神奈川・横浜市を皮切りに20以上の自治体と食品ロス削減に向けた連携協定を締結し、全国に約140あるフードバンクの支援にも取り組むなど、多方面に活動の場を広げている。

■積水ハウス、三井住友、日本交通、慶大と協働でこども食堂支援

2022年2月には新たな社会課題の解決に向けて、こども食堂に食品を届ける実証実験を行った。これは内閣府が進める「戦略的イノベーション創造プログラム」の一環として慶應義塾大学SFC研究所と協働し、企業の協力を得て行ったものだ。

実証実験のスキームは、こうだ。クラダシは「こども食堂向けマッチングサイト画面」を用意し、大阪市内5団体が運営するこども食堂から注文を受ける。食品は積水ハウスと三井住友銀行が、自社の倉庫に蓄えている災害備蓄品を提供。こども食堂への配送は、トラックによる運送に加えて、日本交通がタクシーで行う。

慶応義塾大学SFC研究所等によるコンソーシアムでは、食の生産・流通・消費を最適化するスマートフードチェーンプラットフォーム「ukabis(ウカビス)」を立ち上げており、食品の情報連携基盤 を提供した。

実証実験のスキーム。慶大とともに企業とこども食堂のマッチングを担う。(図:クラダシ)

クラダシ・事業推進本部の中野奈緒子さんは、実証実験の狙いをこう語る。

「こども食堂のニーズは全国的に高まっているものの、食品を届ける仕組みはまだ確立されていません。これまではフードバンクを経由するのが一般的でしたが、直接届けることで配布までのリードタイムを短くし、より個々の希望に添った運用ができないかと考えました」

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S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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