10年以上前から水や農産物などを確保するため自然資本関連のリスク分析を行ってきたキリンだが、「システミック・リスク」を大きな事業リスクと捉えだした。システミック・リスクとは、TCFDの生物多様性版TNFDが提唱するもので、「生態系の崩壊」を指す。TNFDが「物理リスク」と「移行リスク」の次に挙げた3つ目の自然関連リスクだ。(オルタナS編集長=池田 真隆)

グループ企業のメルシャンでは「日本ワイン」の生産・販売に向けて遊休荒廃地をヴィンヤード(ブドウ畑)に転換している。ヴィンヤードに転換することで豊かな生態系の形成を促す

「新型コロナの感染拡大や経済や政情不安で、『システミック・リスク』が現実のものとなってきた。一般的なツール類や学術論文を参考にしたリスク評価だけでは十分ではなくなる」

こう危機感を表したのは、キリンホールディングスのCSV戦略部に所属する藤原啓一郎氏だ。

同社はいち早く自然資本関連のリスク分析を行ってきた。2011年からは生態系のリスク調査、2014年からは水リスク評価、2017年以降はTCFDシナリオ分析で気候変動が農産物や水資源に与える影響を調査・評価してきた。

自然資本関連のリスク分析に力を入れるのは、事業の持続可能性に直結するからだ。キリンの事業領域は、酒類・飲料、ヘルスサイエンス、医薬の3つで、いずれも農産物と水が原料だ。そのため、生産地の生態系を守らないことには安定的な供給ができない。「環境ビジョン2050」を策定し、「生物資源」「水資源」「容器包装」「気候変動」の4つの重要課題を特定し、戦略的に取り組んできた。

7月6日に公開した環境報告書で、自然関連リスクをTNFDが提唱する「LEAPアプローチ」に沿って開示した。同指針に沿った開示は国内初だ。