環境NGO、「水素・アンモニアは脱炭素にならない」と警鐘

記事のポイント


  1. 環境NGOのFoE Japanは、水素・アンモニア発電で4つの問題点を指摘
  2. 4つの問題点は「化石燃料の利用」「コスト」「石炭火力の温存」「国際的状況」
  3. 政府がアンモニアを「脱炭素」の一環にしていることに、疑問を投げかけた


国際環境NGO のFoE Japanが、日本政府が進めようとしている水素・アンモニア火力発電は「脱炭素にならない」と警鐘を鳴らしている。水素・アンモニアの脱炭素についてはかねてから、複数のNGOや市民団体から疑問の声が上がっていた。FoE Japanはまずは、エネルギー政策を担う国会議員に呼びかける意向だ。(オルタナ副編集長・長濱慎)

水素・アンモニアは化石燃料からつくり、輸入が前提(リーフレットより)

■まずは国会議員にリーフレットを読んでほしい

Friends of the Earth(FoE)は1969年に米国で立ち上がり、日本では1980年に活動を開始した。気候変動の回避や、生物多様性の保全などについて提言を行っている。

今回はリーフレット「水素・アンモニアは脱炭素の切り札か?グレーな対策にひそむワナ」を発行し、大きく4つの問題点を指摘している。

1) 原料は化石燃料
水素・アンモニアは燃やしてもCO2が発生しない。しかし原料に化石燃料(天然ガス、石油、石炭)を使い、製造時にCO2が出る。しかも中東や豪州などからの輸入を前提としている。

2) 発電コストが高い
政府の審議会も「当面は既存燃料より割高、大規模・安定調達に向けた展望が見込めない、大規模商用サプライチェーン整備への投資予見性が見込めない」と問題点を認識。仮に将来、水素・アンモニアのコストが下がったとしても、再エネの方がさらにコスト低下していると予想される。

コストダウンへのシナリオは見えていない(リーフレットより)

3) 石炭火力を温存
政府は石炭火力の「脱炭素」にアンモニアを利用する計画で、2030年にアンモニア20%を混焼するとしている。しかし80%は石炭のままで、発電段階のCO2削減効果はわずか。世界的にフェードアウト傾向にある石炭火力の温存・延命につながってしまう。

4) 国際的に認められない
2022年5月の先進国7カ国首脳会議(G7)環境エネルギー大臣会合は、電力部門の2035年までの大幅、もしくは完全な「脱炭素化」を採択した。水素は脱炭素化が困難な鉄鋼部門などで優先利用されるべき。アンモニア発電については日本以外で力を入れている国は見られない。

FoE Japanスタッフの吉田明子さんは、まずはリーフレットを国会議員に普及させたいと話す。

「5月に成立した改正省エネ法は水素・アンモニアを脱炭素燃料に位置付け、岸田政権が新しい資本主義の柱に掲げるグリーントランスフォーメーション(GX)でも利用促進をうたっています。しかし現実には環境面でもコスト面でも問題が多いことを、政策を担う皆さんにもっと知って欲しいと思います」

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #脱炭素

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