記事のポイント
- 個人は企業への帰属意識が低く、多様な働き方を求めるようになった
- 「石の上にも3年」というかつての価値観を押し付ける企業は嫌われてしまう
- どこに就職するかよりも、何を学べるかを重視して働き先を選ぶようになった
「石の上にも3年という価値観は通用しない時代になった」――。こう話すのは人材サービスを展開するネオキャリアの西澤亮一社長だ。コロナ禍によって就職戦線はどう変わったのか、企業は採用戦略をどう組み直すべきなのか、話を聞いた。(聞き手・オルタナS編集長=池田 真隆)
――経産省が2022年5月に発表したレポート「未来人材ビジョン」では、日本企業の従業員のエンゲージメント率は5%でした。これは世界平均の20%の4分の1で最低水準でした。このデータから近年のHR領域の変化をどう見ていますか。
西澤:昨今の就職活動生を見ていると会社への帰属意識は低くなっています。社会に出ることを「辛いこと」だと思い込んでしまう人が増えているからだと思います。
その背景には、ネガティブな情報に飲み込まれていることがあります。ネットニュースやSNSでは「悪いニュース」の方が拡散されやすいように、「ブラック企業」「過重労働」「うつ」などの切り口で報じられるニュースが相次いで目につきます。
テクノロジーの発達で、勝手にリターゲティングされる時代です。自分で探そうとしなくても、就職活動を始めようとした時や転職を考え出した時に自動的に「働き方」に関する情報がスマフォの画面に上がってくるようになります。
それも読まれないポジティブなニュースよりも、よく読まれるネガティブなニュースが優先的に出てくるでしょう。
能動的にならなくても、受動的に生きていける時代と言えるかもしれないですが、自律的に考える機会を失っていることは問題だと思っています。
その状態でネガティブなニュースに飲まれてしまうと社会に出ることは辛いものだと認識してしまい、その結果、会社へのエンゲージメントが下がっているのではないでしょうか。
――就職先を探すときには多様な情報に能動的に触れることが重要ということですね。一方、コロナ禍では行動が制限され就活でPRするものがない、いわゆる「ガクチカ」(学生との時に力を入れたこと)問題もあります。
西澤:コロナによって、留学に行けず、サークルやアルバイトもできなかったという学生がいます。円安なので経済的にも海外で体験を積むことが難しい。複合的に学生には不利な環境です。
ここは企業側がいかにがんばれるかが問われています。人材確保は国力・競争力に直結します。
――日本の将来に期待しないと考える若者も少なくありません。