記事のポイント
- 「新しい資本主義」の波が公益法人にも及んでいる
- 規制に縛られ、資本主義的な自由な発想とはほど遠い運営を余儀なくされている
- こうした状況から、公益法人制度の在り方に関する有識者会議が開かれている
成長と分配の好循環を目指す岸田首相の「新しい資本主義」の波が意外な事に公益法人にも及んでいます。
新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画の社会的課題を解決する経済社会システムという項目に「短期的収益を重視する視点から社会的価値を重視する視点への転換を図る」と記されていますが、CSV(共通価値の創造)や社会起業家の台頭、さらにはSDGsブームを意識したうえで、「米国では2010年から2017年までの間に7704社のベネフィットコーポレーションが設立されており、このような新たな法制度の必要性について検討する」とうたっています。
確かに英国では既に2003年からコミュニティや公益のために事業を行う社会的企業のための組織形態、CIC(Community Interest Company=コミュニティ利益会社)の制度があるし、韓国でも07年、社会起業家支援のための社会的企業育成法が制定されています。ここまでは、社会的課題を解決するためにビジネス手法を活用する意図なのだと理解できるのですが、直後にこう続いているのです。
「あわせて、民間にとっての利便性向上の視点から、財団・社団等の既存の法人形態の改革も検討する」
かなり唐突で、これには財団、社団を会員として抱える公益法人協会関係者もかなり驚いたようです。というのも公益法人は1898年(明治31年)明治民法により誕生して以来、主務官庁の管理下に置かれ、補助金と引き換えに天下り先として苦渋の経験した歴史があるからです。
2008年に公益法人制度改革が実施され、財団、社団の設立が容易になった半面、相変わらず不当とも思える規制に縛られ、資本主義的な自由な発想とはほど遠い運営を余儀なくされているのが実態です。税制上の優遇があり、補助金や助成金を得やすいことを理由にある程度の経営上のしばりが必要だとしても異常です。
そこへ突然「財団、社団等の法人形態の改革」ですからビックリするのも理解できます。この文言が挿入された背景を探ると意外な事実がわかりました。経団連が十倉会長名でことし4月、第6回新しい資本主義実現会議にある資料を提出していました。ここで、経団連は、民間による公益活動を活発化する視点から公益法人制度改革を訴えているのです。
■なぜ経団連が公益法人の改革に乗り出したのか
公益財団法人の在り方について光が当たるのは良いことだと思う一方で、ご指摘のように役人の天下り先や、経営に対する無用な関与が予想されるとすれば警戒すべきですね。私は公益財団法人、世界自然保護基金ジャパンに6年近く勤務して経営に携わりましたが、天下りや活動への横やりを感じたことはなかったのでご指摘は意外でした。ほかの団体にそうした実例があるのでしょうか?
監督する内閣府の指導で唯一懸念を感じたのは、「収支相償」で、想定外の大口寄付などがあっても一定期間内に支出し、長期の繰り越しは出来ないという点でしたが、これも目的を明確に積み立てて計画通りに支出すればよく、事業運営上の制約とまでは言えませんでした。公益財団の活動は社会の利益になるはずですので、何か問題があれば具体的な事例を示しつつ解決してゆくべきと思います。