原田勝広の視点焦点―横浜で「CO2 60%削減」の声

気候危機は待ったなし

エジプトでCOP27が開催されましたが、ウクライナ危機もあって目標の「1.5度」達成に暗雲が立ち込めるなど地球温暖化をめぐるニュースは暗いものばかり。米フロリダ州では海面上昇による水没危機で地価が下落しているし、日本でも沖ノ鳥島が高さ16センチしかなく海面下に沈めば日本の国土を上回る40万平方キキロを失いそうな事態です。

「2050年にCO2排出を実質ゼロに」そう宣言していた企業も実現できそうなのはわずか8%だというし、UNEPは「このままでは今世紀末には産業革命前に比べ気温は2.4-2.6度上昇」と悲観的です。再エネ導入も掛け声ばかりで、東日本は50Hz、西日本は60Hzという送電線は改良されず、電力融通はされないまま。折角の太陽光、風力による再エネも出力抑制で捨てられているのが現実です。まさかグリーン・ウォッシュ、SDGsウォッシュじゃないでしょうね。

日本人はおとなしすぎる。Z世代(1996-2015年生まれ)の代表、グレタ・トゥーンベリさんが議会前に座り込み、声をあげたのは15歳の時。今から4年前のことです。「未来のための金曜日」(Fridays for Futureを組織して学校ストライキ運動も展開しました。彼女のような勇気ある日本人はいないのか。

グレタさんに続けとばかりに横浜で女性が立ち上がる

そんなことを考えていたら、私の住んでいる横浜で、「横浜市の2030年度のCO2削減を2013年度比で60%以上に。そのためにシステムを変えよう」とひとりの女性が立ち上がりました。小林悠さん。32歳。政治家でも宗教家でもない、ごく普通の小学校の英語の先生です。こういう人が立ち上がることこそ大事です。

さくらみらい橋で温暖化対策を呼び掛ける
Fridays for Future横浜のメンバーと小林さん(左)

小林さんは気候危機が限界点に来ていることを知り怖くなったといいます。英語を教えている子どもたちの将来も心配になりました。それでもなにをしたらいいのかわかりません。とりあえず、身の回りから始めました。プラスチック入りの食品は買わない、洋服も新品は購入しない。生ごみはコンポストで堆肥に。電気は再エネに切り替え、ダインベストメントで石炭火力発電所に融資している銀行の口座を閉じました。しかし、個人の努力、ライフスタイルチェンジには限界がありました。

悶々としていた時、誘ってくれる人がいて「ゼロエミッションを実現する会」のオンライン定例会に参加、志のある仲間もできました。「2050年までにCO2排出を実質ゼロに」という目標を、自分が住む自治体から達成しようという会です。この会の事務局を担当しているグリーンピース・ジャパンの鈴木かずえさんの協力も得て、横浜に「ゼロエミッションを実現する会・横浜」を作ることになり共同代表を引き受けました。2021年9月のことです。

ゼロエミッションを実現する会は全国20か所に活動団体があり、再エネ促進、建物の断熱義務化、CO2課税など温暖化防止のためのシステム・チェンジを自治体に働きかけています。ゼロエミ世田谷は若い女性、お母さんがメンバーで、区や区長に具体的な政策提言をしているし、ゼロエミ港を目指す会では区議会に毎回1本以上の請願を提出、採択されています。

最近、横浜市に転居しゼロエミ横浜に参加しているグリーンピース・ジャパンの鈴木さんは「小林さんらコアメンバーが6人いて強力で、横浜市の担当者や市会議員との情報交換、ロビーイングを積極的に行っている。他のグループとのつながりを意識的に作っている点も評価できる」と話しています。

横浜市には全国の自治体リードを期待

横浜市は地球温暖化対策実行計画の改定作業中で、素案を公表していますが、2030年度の削減目標は2013年度比50%にとどまっています。

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harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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