石井吉徳氏(東京大学名誉教授)インタビュー「低エネルギー社会」はEPRが決め手

■徹底的な低エネルギー化が急務

――質の良いエネルギーである化石燃料は、減耗しているだけでなく、温暖化の原因ともみなされている。そこで原子力が自然エネルギーよりも安定し、CO2も出さないという触れ込みで伸長しようとしていた矢先、東電原発事故が発生した

大気中のCO2が増えれば温暖化するのは事実だが、現在進行する温暖化が人為的な要因によるものかについては分からない部分も多い。21世紀に入って地球は寒冷化しているようだ。

石井氏。背後にあるのは石油ピークを示すグラフ

私は国立環境研究所で地球科学を専門に研究していたが、ジュラ紀や白亜紀などの時代はCO2の濃度が今よりもはるかに高く、そのおかげで光合成が盛んに行われ、今日人類が利用している石油資源の源となった。また人類史的に見ても、温暖化していた時期の方が人間にとっては生活しやすい、ハッピーな時代だったと言える。

地球科学の視点で温暖化を考えることをしないまま、温暖化の危機を強調することで、原子力発電が推進されてしまう余地が生まれてしまったのだ。

最近は温暖化を制御する技術として、液化したCO2を地下、海底に送り込むCCSが注目されているが、液化して注入する過程で多量のエネルギーを消費し、トータルでのCO2排出は増える。また、高層大気に亜硫酸ガスをまきちらすジオエンジニアリングなども、やってはいけない。

――今回の原発事故と同じで、人間の英知が全てを解決できると思うところに間違いがあると

その通り。加えて原発でもカーボントレードでもCCSでも、そこで儲けようと考えている人が多く群がっている。財政危機の日本に、それらと関わっている余裕は全くない。温暖化問題は一度脇に置いて、低炭素社会ではなく、低エネルギー社会を実現しなければならない。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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