英語で学ぶサステナビリティ(26)

皆さんこんにちは! 

「〇年ぶりに開催」と銘打たれたイベントの様子がメディアを賑わしていますが、皆さまお元気でしょうか。

今月はLesson 5“What is Diversity and Inclusion?“「ダイバーシティ&インクルージョンとは何か」を取り上げます。

一般に、日本企業は元来長期雇用を基盤として、新卒で採用した従業員(正社員)を育てていくスタイルをとっていましたが、今日、ご存じのようにこうした前提が大きく変化しようとしています。組織は多様な人材を受け入れ、活かし、企業としての価値を高めることが求められています。こうした背景から、ダイバーシティ・マネジメントの重要度はますます高くなっています。イノベーションを起こしVUCAの時代といわれる不確実な環境を乗り切るうえで、不可欠な取り組みともいえるでしょう。

【語注】
ethnic   民族(の)
autonomously   自律的に、独立して
self-sufficiency   自給自足
specifically   具体的に、具体的に言うと
enrolment (enrollment) 登録
incur  (好ましくないことを)招く
proactive  先を見越した、積極的な

私たちが生きている社会・世界を正しく理解しよう

There are 700 to 800 different races on Earth. Each race has its own culture, lifestyle, religion, values, ideology, language, and history. There are also about 200 countries in the world. No two countries are the same – they are made up of different ethnic groups under different political and economic systems. The society we live in is made up of people with different and diverse backgrounds, including gender, nationality, place of origin, age, disabilities, LGBT, values, beliefs, personalities, skills, and abilities. The word diversity represents the fact people live with a huge variety of background.

【訳】
地球上には700~800の種族が住んでいます。どの種族もそれぞれに異なった歴史のなかで、私たちの文化、生活習慣、崇拝する宗教、価値観、思想、言語をもって生きています。また、世界には約200の国が存在します。様々な人種で構成されている国、異なった政治、経済体制の中で運営されている等、ひとつとして同じ国はありません。さらに、私たちが生きている社会の中でも、性別の違いはもとより、国籍、出身地、年齢、健常者・非健常者、LGBT、価値観、信条、さらに性格、特技、能力など、異なった背景を持つ人たちによって構成されています。多様な背景をもって人々は生きていることをダイバーシティといいます。

Both countries and companies have become borderless across the globe. More and more multinational companies have multiracial people working in the same workplace. People are now expected, in almost every organization, to take a creative approach to their work, solve problems quickly, and accomplish their tasks autonomously, rather than by following orders from higher-ups. It is no longer possible for a country, a company, or society to make progress without understanding and recognizing the diversity of society.

【訳】
国も企業も国境を越えてボーダーレス化しました。様々な人種の人々が同じ職場で働く多国籍企業はますます多くなっています。どの組織でも、上の命令に従うだけでなく、仕事に対して創造的なアプローチをし、スピーディに問題解決をし、自律的に任務を達成することが求められます。もはやこの社会の多様性を理解・認識せずに国も企業も社会も進展していくことは不可能です。
Autonomously の名詞autonomyはもともと古代ギリシャ語に由来する語で、一般に、自主(性)・自律(性)・自立(性)・自治、自治権などを意味します。今日、政治、法律、哲学、心理学、倫理学、社会学など様々な領域で重要な概念となっています。

どの国も自国だけでは成り立っていかない

We have to understand that Japan, without natural resources for self-sufficiency, is faced with the fact that we will not be able to last even for a day without maintaining friendly relations with other countries in Asia and the rest of the world. In order for Japan to live as a country that is sought, respected, and expected by the world and other Asian countries as a leader, the Japanese people need to grow aware of, understand, and recognize the importance of a diverse society more than ever before.

【訳】
天然資源に乏しく自給自足ができない日本は、アジアをはじめ世界の国々との友好関係の維持なくしては一日も生きていくことは不可能であるという現実を理解しなければなりません。世界から、アジアの諸国から、日本が求められ、尊敬され、期待される国(願わくはリーダー国)として生きていくためには、従来にも増してダイバーシティ社会を意識・理解・認識した生き方が求められています。

健全な社会を維持していくためには

Specifically, there are the following broad categories: 

1) Gender: Women’s college enrolment rates in Japan are among the highest in the world. However, few people intend to give back to society with the education they received. The Japanese society lags behind the rest of the world in terms of the percentage of women’s participation in decision-making in various sectors of society, ranking 114th out of 144 countries (“2017 Global Gender Gap Report”). It incurs not only bad publicity but also delay in the revitalization of Japanese society.

【訳】
具体的に、インクルージョンは以下に大別されます。
1)性別  女性の大学進学率は世界でも上位ですが、日本社会で、自分が受けた教育を社会にお返ししようという人はほとんどいません。各界における政策決定の場への女性の参画率が144か国中114位と世界でも遅れている(「2017年版 世界男女格差報告」)世界のひんしゅくを買っているだけでなく、日本社会の活性化を阻む結果にもなっています。
enrollment rate  就学率、在学率、入学率
lag behind  後れを取る
bad publicityは「悪評」。Incur bad publicityは「悪評を招く」です。日本では、一般に「悪評」はよくないものとみなされることが多いと思いますが、「なんであれ、評判になるのはよいこと」とみる見方もあります。

2) Age: Rather than a blanket welfare administration for the elderly over 65, a society is expected in which healthy, capable, energetic and motivated older people are respected as indispensable and active members of society.

3) People with Disabilities: We need to strive to create a living, social, and working environment for people with disabilities that is equal to that of able-bodied people. 

4) LGBT: We have to create a society in which LGBT people, who make up 7.6% of the population, can live life to the fullest while fulfilling their individual abilities.

【訳】
2)年齢 65歳以上の高齢者を一律に福祉行政で対応するのではなく、健康で能力があり、エネルギッシュでやる気のある高齢者が必要不可欠な存在として尊重される社会が望ましいです。
3)障がい者 健常者と対等な生活環境、社会環境、就労環境を醸成することに努めていかなければなりません。
4)人口の7.6%のLGBTもそれぞれ持つ能力を発揮しながら、生き生きと生きていける社会に
blanket welfare administrationのblanketは「全面的な、包括的な」。「毛布のようなもので(一面を)覆う」から転じて「(法律などが)一律に適用される」(他動詞)という意味で用いられます。Blanket bill 包括的議案、blanket agreement 包括的協定、など。

ダイバーシティという言葉は普及してきたものの、女性活躍推進と同じこととして受けとめる向きも多いようです。そのため、企業全体の問題でなく、一部で対応する問題として捉えがちです。これからは、属性による違いを超え、ひとりひとりが価値観を認め合い、能力を発揮して役割を果たしうる、よりエンゲージメントの高い組織づくりが期待されます。企業文化を理解し根の部分は尊重しつつ、新たな風を取り込み、しなやかに変わっていくことが生き残りの鍵となるのではないでしょうか。

今月はここまでです。次はお目にかかるのは2023年ですね。皆さま、いいお年を。

aishima

相島 淑美(神戸学院大学経営学部准教授)

日本経済新聞記者、清泉女子大学英文学科教員を経て現職。翻訳家。鈴木淑美名義でJFK伝記など20数冊の訳書がある。 博士(先端マネジメント、関西学院大学)、MBA(関西学院大学)、修士(文学、慶應義塾大学)。文化・文学の視点から日本のマーケティング、SDGs、エシカル消費について研究している。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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