記事のポイント
- 欧州連合(EU)は12月13日、「国境炭素税」の導入を決めた
- 2023年10月に施行し、輸入品に伴う温室効果ガスの排出量の報告を義務付け
- その後、アルミニウム、鉄鋼、肥料などの輸入事業者に税金の支払いを義務付け
欧州連合(EU)は12月13日、EU域外からの輸入品に伴う温室効果ガスに課税する「炭素国境調整措置(国境炭素税)」の導入を決めた。2023年10月に施行し、まずは輸入事業者に輸入品に伴う温室効果ガスの排出量の報告を義務付ける。その後、輸入事業者に税金の支払いを義務付けていく。アルミニウム、鉄鋼、肥料、セメント、化学製品、水素製造業に適用する。日本で導入に向けて制度を議論している排出量取引にも影響が出る。(北村 佳代子)

EUが導入を決めた炭素国境調整措置とは、「国境炭素税」とも呼ばれるものだ。国ごとの気候変動対策の強度の差異によって起きる競争上の不公平を防止するための施策だ。
炭素国境調整措置では、EU域外からEU域内への輸入品に対して温室効果ガスの排出量に応じた負担を求める。EU域内からEU域外への輸出品に対しは、負担分の還付を行う。
国によって気候変動対策の強度が大きく違ってくると、企業は生産拠点を規制が緩やかな国に移転することを考える。そうなると、地球規模で見ると温室効果ガスの総排出量は減らない。そのため、炭素国境調整措置を導入して、国ごとの規制の差異を埋めることを狙う。
欧州議会で協議を主導したモハメド・チャヒム議員は、「この指令によって、多排出事業者に支払いを求める。他の国々にも同じことをするよう働きかける」と話した。
この制度はまず、欧州でエネルギー集約型の産業に適用する予定だ。アルミニウム、鉄鋼、肥料、セメント、一部の化学製品、そして、今後急成長が見込まれる水素製造業だ。
2023年10月に施行し、適用する事業者に輸入に伴う温室効果ガスの排出量の報告を義務付ける。その後、事業者に税金の支払いを義務付ける。
EUは炭素国境調整措置を検討する前から、鉄鋼など一部の温室効果ガスを多く排出する産業を対象に一定の緩和策を取ってきた。産業競争力上の配慮が必要だという理由からだ。
EU域内の排出量取引制度では、事業者は排出枠を入札で獲得するが、鉄鋼などの多排出セクターに関しては無償で割り当ててきた。
炭素国境調整措置を導入することで、無償の割り当てを無くしていく方針だ。
EU域外との競争上の懸念に応えつつ、炭素排出のコストを明確にすることで、多排出セクターに対して、産業構造の転換を促すことを狙う。