記事のポイント
- フランスの研究チームが地中海でマイクロファイバーを調査した
- マイクロファイバーが病原菌を含む細菌の「運び屋」になっている
- 日本では北海道大学などの研究グループが、魚類がプラスチック製品に含まれる添加剤を内臓に取り込み蓄積することを発表した
フランス・ソルボンヌ大学の研究者はこのほど、地中海に浮かぶマイクロファイバー(微細な繊維)から腸炎ビブリオを含む約200種類の細菌を確認したと科学誌に発表した。これらの細菌はマイクロファイバー上にコロニーを形成しているという。腸炎ビブリオは食中毒を引き起こす病原菌だ。マイクロファイバーは病原菌や汚染物質を他の生物に媒介し、生態系や人間の健康を脅かしている。(オルタナ編集委員・栗岡理子)
■マイクロファイバー上で細菌が繁殖
科学誌『PLOS ONE(プロスワン)』に発表された新しい研究によると、研究者らは地中海に浮かぶマイクロファイバーを収集し、付着している細菌の組成を調べた。その結果、腸炎ビブリオなど195種類の細菌の存在を突き止めた。
平均で2600個を超える細菌がマイクロファイバー上にコロニーを形成していたという。家庭での洗濯や衣類の着脱、漁網や釣り糸などからも発生するマイクロファイバーは、合成であろうと天然であろうと海で最も一般的な粒子として存在し、水生生物に影響を与えている。
■合成繊維は細菌にとり、都合のよい「運び屋」
なかでも耐久性の高い合成繊維のマイクロファイバー、つまり繊維状のマイクロプラスチックは細菌にとって打ってつけのベクター(運び屋)となり得る。細菌は合成繊維に住み着いて一緒に海を漂いながら生育し、生き物に繊維ごと食べられればその生物の体内でも増殖できるのだ。
病原性微生物やその他の汚染物質がマイクロファイバーに付着して拡散されるならば、マイクロファイバーによる海洋汚染は生態学的にも経済的にも脅威となる可能性があると研究者はいう。
これまでもマイクロプラスチックは化学物質を高濃度に吸着し、化学物質の運び屋になることが指摘されていた。最近では北海道大学と東京農工大学の研究グループが、魚類がマイクロプラスチックを食べることでプラスチック製品に含まれる添加剤を筋肉や肝臓などに取り込み蓄積することを発表した。
プラスチックの便利さは言うまでもないが、プラスチックによる生態系や健康への悪影響は徐々に明らかになってきている。