プラごみ汚染根絶に向けた条約 日本の指導力に期待

記事のポイント


  1. 法的拘束力のあるプラスチック条約を制定するための国際交渉が始まる
  2. 生産段階も含めた包括的な条約づくりのため、日本のリーダーシップに期待
  3. 国連事務総長が各国に「プラスチックの蛇口を閉めよう」と呼びかける

プラスチック汚染を終わらせるための国際条約策定に向けた第1回政府間交渉委員会(INC-1)が、11月28日から5日間にわたりウルグアイで開催された。2024年末までに法的拘束力のある国際文書(条約)をまとめるための会合だ。世界初のプラスチック汚染対策に向けた条約制定を目的に、150カ国を超える国連加盟国、国際機関、NGOなど約2300名が参加した。どのような話し合いが行われたのだろうか。(オルタナ編集委員・栗岡理子)

インドネシア・バリ島のビーチに散乱するプラスチックごみ(© Made Nagi / Greenpeace)

■世界初のプラスチック条約、国際交渉始まる

2022年3月の国連環境総会において、「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力のある国際約束に向けて」が採択された。それに基づき、政府間交渉委員会(INC)の設置が決まり、その初会合がウルグアイのプンタ・デル・エステで行われた。世界初のプラスチック条約締結に向け、端緒が開かれたのだ。

会合ではまず、各国及び地域から意見が述べられた。日本からは、本条約が全ての国にとって実効的かつ進歩的なものとなるよう、日本が主導的な役割を果たしていきたい旨が話された。

代表団を送った国際環境NGO・グリーンピースによると、会合の一般的なトピックは条約の範囲や目的、大まかな構造に関することなど。各国の負う中核的義務や管理措置、自主的アプローチに関することも話し合われた。また、能力開発や技術支援、資金調達、実施を支援するための措置などについてもテーマになったとのこと。グリーンピース・ジャパンの広報・平井ナタリア恵美さんに初会合の概況を聞いた。

――初会合はどのような様子でしたか。

「プラスチック条約のプロセスにプラスチック産業が参加することには、利益相反の懸念が示されました。また、『野心連合』の参加国を含むいくつかの国々が、プラスチック汚染の危機を止めるためにプラスチックの生産量を減らさなければならないと公言しました」

野心連合とは今年8月に発足した「The High Ambition Coalition to End Plastic Pollution(プラスチック汚染根絶を目指すための高い野心をもつ連合)」のことで、日本は参加していないが、現在世界52ヶ国が参加している。野心連合の議長国はノルウェーとルワンダ(共同議長)だ。

日本はアジア太平洋地域の理事候補

――日本は理事候補ということですが。

「各地域で2カ国の理事が選出されます。日本とヨルダンがアジア太平洋地域から理事候補に選出されています。東欧では、ジョージア、エストニア、ロシア、ウクライナの4カ国が候補に上がっており、ロシアによるウクライナ侵攻というセンシティブな問題に関わるため決定が延期され、理事の確定は次回のINC-2に持ち越されました。」

「議長国には、3回目までがペルーのグスタボ・メサ=クアドラ前外務大臣が選任され、第4回以降はエクアドルです」

日本のリーダーシップに期待

――グリーンピースは日本政府にどのようなことを期待していますか。

「日本はアジア太平洋地域を代表する理事に選出される可能性が非常に高いため、この機会にプラスチックの原料採掘から生産、流通、消費、廃棄、流出まで、全ての段階における汚染に対応していただきたい。大量生産・大量消費社会から根本的に転換させていく条約を目指し、リーダーシップを取ってもらいたいと考えています」

今後の議論においては、プラスチック問題の下流(廃棄物管理など)だけでなく、上流(製造時の汚染、地域住民の健康被害、気候変動への影響など)にもより注力し、包括的な条約づくりへの貢献を日本政府に期待しているとのこと。

条約制定に向け、INCは2024年末までに5回開かれる。次の会合は5月22日から26日までフランス・パリで開催される予定だ。

国連事務総長「プラスチックは形を変えた化石燃料」

アントニオ・グテーレス国連事務総長はINC-1最終日の12月2日、「プラスチックは化石燃料の形を変えたものであり、人権、気候、生物多様性に対して深刻な脅威を与えている」とツイート。「プラスチックの蛇口を閉めよう」と各国に呼びかけた。

国連環境計画の新しい報告書によると、管理が不適切なプラスチックごみの量は2040年に2.5倍に増え、環境中への流出も大幅に増えると予測されている。一方、プラスチックの使用自体を抑えリサイクルを進めるなど対策を強化すれば、海への流出を40年に80%減らすことは可能だとしている。プラスチックによる環境破壊をなくすための真に実効性のある条約が望まれる。

環境にやさしい暮らしを考える

栗岡 理子(編集委員)

1980年代からごみ問題に関心をもち、活動しています。子育て一段落後、持続可能な暮らしを研究するため、大学院修士課程に進学。2018年3月博士課程修了(経済学)。専門は環境経済学です。執筆記事一覧

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キーワード: #SDGs

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