記事のポイント
- カルティエ ジャパンが、「自分らしく働ける『居場所』」づくりに注力する
- 最近注目が集まるDEI(多様性・公正性・包摂)施策の一環
- 同社は筑波大と協働し、「DEI指標」の作成にも取り組み始めた
カルティエ ジャパンが職場を自分らしく働ける『居場所』にする取り組みに力を入れている。DEI(多様性=ダイバーシティ、公正性=エクイティ、包摂=インクルージョン)の一環で、性別や国籍、障がいの有無などを乗り越え、すべての人々を迎え入れる施策だ。筑波大学とともに「DEI指標」の作成を目指すカルティエ ジャパンの宮地純プレジデント&CEOに、その狙いを聞いた。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

■カルティエ3代目から始まる「DEI」
――カルティエが女性社会起業家の支援やDEIに積極的に取り組んでいる理由は何ですか。
カルティエは、ビジネスにおいても、創作活動においても、女性が中心的な役割を担ってきました。1847年に創業しましたが、1933年にハイジュエリーのクリエイティブディレクターに女性が抜擢されました。ジャンヌ・トゥーサンという女性ですが、当時としては異例のことでした。
カルティエ創業者の孫、ルイ・カルティエが、彼女の才能と先を見据える力を見出し、任命しました。ジャンヌ・トゥーサンはカルティエのアイデンティティをつくるうえで強い影響を与えた人物です。
女性をサポートする考えはメゾンに長らくあり、2006年には「カルティエ ウーマンズ イニシアティブ」(CWI)を立ち上げました。
このプログラムでは、ビジネスを通して社会に持続的なインパクトをもたらす女性起業家に対し、これまでに世界62カ国262名に、644万米ドル(約850億円)以上を支援しています。
資金面ももちろんですが、どう資金調達を行うかや、プレゼンテーションスキルの向上、あるいは女性起業家ならではの悩みなど、女性起業家には様々な課題があります。
CWIでは、資金だけでなく彼女たち自身の成長を支援するプログラムも用意しています。また、彼女たち同士のコミュニティもでき、ともに成長できる機会となっています。
――そのCWIですが、日本人女性からも応募は来ますか。
2019年に日本人のフェロー(ファイナリスト)が誕生しました。日本では起業文化自体が発展途上であることに加えて、ソーシャルインパクトに重点を置いた起業で女性に絞ると、非常に少ないのが現状です。ビジネスを通してソーシャルインパクトを起こすという考え方も日本での認知度を高める必要があると思います。
当社としては、CWIへの応募だけでなく、そもそも「ソーシャルインパクト」「アントレプレナーシップとは何か」を国内で伝えていくことが重要だと考えています。それに向けて、教育機関とともにできることはないかと模索しています。
■筑波大学との共同研究プロジェクトが2022年に始動