原田勝広の視点焦点―「国連機能不全」論の的外れ

ウクライナ問題を協議する国連の安全保障理事会(UN photo)

国連は非民主的で不公平な組織

ウクライナや北朝鮮問題で国連が機能していないと嘆く声が聞こえてきます。本当に国連は機能不全に陥っているのでしょうか。残念ながら、答えはノーです。なぜなら安全保障理事会で常任理事国は拒否権を持っており、他の理事国が全員賛成でも、たった1ヵ国でその決議案を葬ることができる仕組みだからです。そういう意味では安保理はしっかり機能しているわけです。もちろん反論はあるでしょう。

「国連は世界の平和と安全を維持するのが役割のはず。それを果たしていないという意味で機能不全なのだ」と。なるほど、一理ありますね。理論的には正しいし、世界の安全保障、つまり国債の平和と安全の要になってほしいという期待は理解できます。

しかし、それは国連に対する幻想、控えめに言って、国連を理想化しすぎているような気がします。なぜなら、国連は第二次大戦後、国際政治・外交をうまく乗り切るために手練手管で編み出された非民主的で不公平な組織だからです。まずはそうした現実を直視し、そのうえでよりよい世界組織をつくりあげる道を探るべきだと思います。

拒否権は「全会一致の法則」

評判の悪い拒否権ですが、これは、裏から言いかえると「全会一致の法則」ということになります。何かを決議しても大国が反対していたのでは物事が動きません。だから、米、英、仏、中、ロの5常任理事国全員が協力してやろうということになったことだけについて一緒に動こうという考え方です。

もし拒否権がなかったら、どういうことになるでしょう。多分、自国の国益が損なわれると思った常任理事国は国連から脱退するでしょう。国際連盟の二の舞いです。不満があるたびに大国が抜けていたら国連はそれこそ機能せず、平和の維持どころではありません。

一部の大国に不利な決議が安保理で否決されないようにする仕掛けもあります。

有料会員限定コンテンツ

こちらのコンテンツをご覧いただくには

有料会員登録が必要です。

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..