記事のポイント
- SMBCグループが、東アフリカ原油パイプラインへの現時点での関与を否定
- プロジェクトへの関与について明言したのは初めて
- しかし不透明な部分も多く、ステークホルダーとの対話方法にも課題
三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は5月16日、ウガンダとタンザニアで進む「東アフリカ原油パイプライン(EACOP)」に「現在は関与せず」との立場を明らかにした。米ブルームバーグが報じた。同計画は気候危機を招くとして環境NGOなどから批判を集めており、財務アドバイザーを務める三井住友銀行には撤退を求める声が上がっていた。(オルタナ副編集長・長濱慎)

ブルームバーグの報道によると、SMBCグループの高梨雅之CSuO(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)が、気候変動への取り組みに関する説明会で「現在はEACOPに関与していない」との立場を明らかにしたという。同グループが本件について明言したのは初だ。
EACOP(イーコップ)はウガンダで採掘した原油を、タンザニアの港まで輸送するパイプライン建設プロジェクトで、2023年中の着工と25年の完成を目指している。しかし、CO2排出や生態系破壊、水質汚染が懸念され、住民への人権侵害も起きている。
世界でもっとも非難を集める化石燃料プロジェクトとして、すでに40以上の金融機関が「関与せず」を表明した。オルタナで報じた通り(2月23日)、財務アドバイザーなどを務める三井住友銀行には環境NGOや市民から撤退を求める声が上がっていた。
国際環境NGO 350.org Japanの伊与田昌慶チームリーダー代理は「SMBCグループがEACOPと距離を置く発言をしたのは初めてであり、歓迎する」としながらも、こう指摘する。
「長期間にわたる抗議にもかかわらず、本日まで、SMBCグループ及び三井住友銀行側から、EACOPと距離を置く回答はなかった。今回の報道においても『現在は関与していない』と述べるにとどまり、これまでどのような関与があったのか、今後も関与する可能性があるのか、財務アドバイザーをやめたのか等については不透明なままです」
SMBCグループは、前回のオルタナ編集部の取材に対しても「個別案件についてのコメントは差し控える。持続可能な社会の実現に貢献するため、引き続き気候変動への対応、生物多様性の保全、人権の保護尊重等に真摯に取り組んでいく」と、回答するのみだった。
SMBCグループは、国際的なイニシアチブである「ネット・ゼロ・バンキング・アライアンス」に参加し、2050年までに投融資ポートフォリオ全体から排出される温室効果ガス排出量をネットゼロにするとしている。
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に沿った情報開示も行うとしており、2020年から毎年「TCFDレポート」を発行している。これらの取り組みの一環として、NGOや市民など多岐にわたるステークホルダーとの対話を真摯に行うことは、必要不可欠だ。