記事のポイント
- EUは2035年以降、EVとともに合成燃料を使う自動車も販売を許容する方向だ
- ポルシェも関わり最も進む計画は南米チリのほぼ無人の地で製造する
- 風況が良く潤沢な再生可能電力を供給できることがポイントだ
EUは2035年以降、域内で販売する自動車はCO₂を排出しないものに限るが、EVとともに合成燃料(e-fuel)を使う自動車の販売も許容する方向だ。ポルシェが関わる合成燃料のプロジェクトは南米チリのほぼ無人の地で製造する。風況が良く潤沢な再生可能電力を供給できることがポイントだ。オルタナ客員論説委員の財部明郎氏が解説する。

(目次)
■チリのほぼ無人の地でe-fuelを製造する
■e-fuelは水と空気と電力で作られる
■潤沢な再生可能電力を供給できることが決め手に
2023年2月EU委員会はEU域内で販売される乗用車は2035年以降、CO2を排出しないものに限ると発表した。これは事実上、電気自動車(EV)以外は販売禁止、つまりエンジンを使う車は販売できないと受け取られて大きな話題となった。
しかし、このEUの方針に反発したポルシェを始めとするドイツの自動車業会は、e-fuelを燃料として使うのなら大気中のCO2を増やさないので、エンジン車も認めるべきだと主張。EUもその方向で検討していると報道されている。
エンジン車の救世主となった格好のe-fuelであるが、ではe-fuelはだれが、どこで、どんな方法で生産しているのだろうか。ポルシェはカーメーカーであり、燃料メーカーではないから彼らが自分でe-fuelを製造販売するわけではない。実はe-fuelはとんでもないところで生産されているのだ。
まず断っておくが、e-fuelは開発途上の燃料であり、本格的な量産は始まっていない。いくつかの企業が開発研究を行っており、そのうちまたいくつかの企業が製品を試作している段階である。
ちなみにドイツにe-fuelアライアンスという組織がある。e-fuelの業界団体のようなものであろう。この組織のホームページを見ると、世界で18カ所のe-fuel開発生産プロジェクトが掲載されている。