ロンドン五輪は「持続可能性」がテーマ:廃棄物ゼロ、生物多様性の保全を目指す――下田屋毅の欧州CSR最前線(15)

在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅氏

「ロンドン2012五輪」開幕まであと少し。ロンドン五輪は、夏季五輪・パラリンピックとして初めて、プランの段階から「サステナビリティ(持続可能性)」を取り込んだイベントとして実施されている。

主催団体である「ロンドンオリンピック・パラリンピック競技組織委員会」 は2011年、イベントに関するサステナビリティマネジメントシステムであるBS8901に資格を与えられた最初の組織委員会だ。これまでサステナビリティをイベントに取り込もうと尽力してきた。

BS8901とは、ロンドン五輪を行う上で、環境・社会・経済のバランスが取れた大会として運営するために2007年に策定された規格だ。ロンドン五輪にサステナビリティがどのように深く組織に根付いているかの証拠となる。

これから開幕するロンドン五輪では、BS8901を原案にして企画化されたISO20121(イベント・サステナビリティ・マネジメントシステム:2012年6月15日発行)が使用される予定だ。

ロンドン五輪のサステナビリティプランは、次の5つの主要なテーマに焦点を当てている。

1.気候変動

2.廃棄物

3.生物多様性

4.インクルージョン(社会的一体性)

5.健康な暮らし

「気候変動」では、低炭素五輪を実施し、気候変動にどう適応すべきかを世界に披露することを目的としている。温室効果ガスの排出量を最小限に留め、歴史的建造物が気候変動の影響に対処できるようにする。

二酸化炭素削減のターゲットは50%と掲げており、2011年12月現在58%の削減を達成している。逆に自然エネルギーの活用のターゲットについては20%としていたが、大規模風力発電の計画中止で達成困難となっている。しかしながら2011年12月現在は、バイオマス発電や小規模風力発電などにより10.8%としている。

「廃棄物」では、廃棄物ゼロの五輪の実施を目指す。廃棄物量を最小限に留め、五輪競技期間中の物資の再利用とリサイクルを最大化して、埋立処理場への廃棄物の持ち込みをゼロにする。

建設時と解体時の再利用・リサイクルのターゲットはそれぞれ90%以上を掲げているが、2011年12月現在、建設時99%、解体時98.5%を達成している。

「生物多様性」については、生物多様性を守ること、新しい都市型の緑化スペースを作ること、スポーツと文化を通して、人々が自然を身近に感じられるようにすることを目的としている。五輪競技場とその付近の野生生物・生息地に対する五輪競技の影響を最小限に留めるなどの努力をする。

「インクルージョン(社会的一体性)」については、全ての人々がアクセスできるように促進すること、(人種や文化などの)多様性を祝い、競技がメインで実施されるローワーリーバレー地域とその周りのコミュニティの物質的、経済的そして社会的再建を促進することによって、最もインクルージョンを考えた五輪の主催を目指す。

ロンドン2012五輪をすべての人々の為の五輪とするという概念の下、この地域での新しい雇用、トレーニング、ビジネスの機会を作ることも考えられている。

「健康な暮らし」については、五輪を主催することによって、英国中の人々が、スポーツを始めるなど活動的、健康的、持続可能なライフスタイルを送れるようになるように活気付けるとしている。

さらにこのロンドン五輪では、サステナビリティ報告書を発行しており、GRIのG3.1のイベントオーガナイザー業種別補足文書をベースに作成、アプリケーションレベルAと宣言している。

この「ロンドン2012五輪」から「サステナビリティ」の重要性が世界に発信され、これをきっかけにして世界の様々な地域で「サステナビリティ」の意識が高まることを期待したい。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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