ASEAN会議機に環境NGO「日本のGXは化石燃料依存」と批判

記事のポイント


  1. ASEAN首脳会議に合わせて、アジアの環境NGOがアクションを行なった
  2. 日本が輸出を目論む、化石燃料に依存した技術からの脱却を求める
  3. 技術・コストの両面から、再エネの普及が脱炭素の現実的な選択肢に

第43回東南アジア諸国連合(ASEAN)が、9月7日に閉幕した。これに合わせ、開催地のインドネシア・ジャカルタをはじめ9都市・地域で、環境NGOが脱炭素を求めるアクションを行なった。石炭火力発電のアンモニア混焼など化石燃料の使用を前提とした技術からの脱却を訴えており、GX(グリーン・トランスフォーメーション)の名のもとにこれらの輸出を目論む日本の責任が問われている。(オルタナ副編集長・長濱慎)

ジャカルタでのアクション(写真:WALHI)

■大気汚染防止のためにも脱化石・再エネシフトを

アクションは9月6日、アジアの環境NGO8団体がジャカルタ、マニラ、ハノイ、東京などの9都市と、ガス開発計画のあるフィリピン・ルソン島のバタンガスで行なった。

アジアの市民は気候変動だけでなく大気汚染という観点からも、化石燃料からの脱却を求めている。インドネシアのNGO「トレンド・アジア」のノビタ・インドゥリ・エネルギーキャンペーナーは、こう指摘する。

「ASEANは経済成長の中心であるだけでなく、再エネ成長の中心でもあるべき。石炭のような化石燃料に依存し続ければ、何十万人もの病気を引き起こし、南千人もの死者をもたらすことになる」

グリーンピース・インドネシアのボンダン・アンドゥリヤヌ・気候エネルギーキャンペーナーは、こう続ける。

「インドネシアでは、社会健康保険による6種類の呼吸器系疾患の医療費が、2022年に10兆ルピア(約900億円)に達した。この財政負担は、化石燃料による健康被害を考慮しなければならないという緊急課題を浮き彫りにしている」

「エネルギー・クリーンエアー研究センター(CREA)」(フィンランド)のレポート(23年7月)によると、インドネシアでは石炭火力発電所からの大気汚染物質の排出量が過去 10 年間で 110% 増加。計画中の石炭火力が完成・運転開始すると、2030 年までにさらに 70% 増加するという。

同シンクタンクは別のレポート(23年5月)で、アンモニア混焼にするとさらに大気汚染物質が増加し、呼吸器疾患による死亡リスクを増大させると警鐘を鳴らした。

ジャカルタの大気汚染

■「日本の汚れたエネルギー戦略」に立ち向かう

アジアの市民が特に問題視するのが、日本がGX戦略の柱の一つに掲げる「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」だ。このイニシアチブは脱炭素をうたいながら、LNG(液化天然ガス)や水素、アンモニア、二酸化炭素の回収・利用・貯留(CCUS)技術を中核に位置付け、化石燃料に依存し続けるという矛盾を抱えている。

国際環境NGO「債務と開発に関するアジアの民衆運動(APMDD)」(本部:マニラ)のリディ・ナクピル・コーディネーターは、こう強調する。

「私たちはASEAN加盟国に対し、公正なエネルギー移行に向けた協力を強化するよう求める。ASEANは、この地域に対する日本の汚れたエネルギー戦略や、誤った対策に立ち向かう必要がある。ガスエネルギーの拡大や、化石燃料に基づいた技術の推進を止めなければならない」

アンモニアやCCUSは開発途上の技術で、パリ協定1.5度目標達成への貢献度も疑問視されている。それよりも、すでに技術が確立された太陽光や風力などの再エネを普及させる方が脱炭素の近道になる。このことは、国際的な研究機関やシンクタンクも指摘している。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、東南アジアでは2010年から22年の間に再エネの累積設備容量が3倍以上の102ギガワットに増え、石炭火力を上回ったという。

ブルームバーグ・ニュー・エネルギーファイナンス(BNEF)は22年12月の調査で、東南アジアの新設太陽光発電のコストが新設石炭火力を下回ったことを明らかにした。

自然エネルギー財団は9月6日、これら各団体の調査データをもとにした報告書「自然エネルギーが東南アジアの未来を拓く」を公表。東南アジアには現在の総発電量の40〜50倍の再エネのポテンシャルがあり、そこに政策や投資を集中させるべきとしている。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #脱炭素

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