「PBR1倍割れ問題」は日本経済を再生するカギか(後)

記事のポイント


  1. 成長期待向上には、社会課題解決を通じた企業の成長ストーリーが肝になる
  2. 価値創造プロセスを構築・実行・開示し、投資家と対話することが重要だ
  3. オムロンは長期志向の価値創造経営を実践し、高PBRを継続的に達成している 

前編では、日本企業は「PBR1倍割れ問題」への対応を中長期的な経営課題と捉え、経営陣が中心となって組織横断的に取り組み、資本収益性と成長期待の両方を高めることの必要性を指摘しました。特に大企業では、事業ポートフォリオの最適化による資本収益性の向上が重要になることを解説しました。後編では、成長期待向上のための社会課題解決を通じた価値創造プロセスの構築・実行、持続的な企業価値向上に向けたオムロンの取組などについてご紹介します。(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見)

■社会課題の解決を通じた価値創造プロセスの構築・実行(成長期待の向上)

PBR向上に向けたもう1つの取組である将来の成長期待向上のためには、気候変動、経済格差、自然災害、健康・医療・介護などの社会課題の解決が肝となります。

世界が直面する様々な社会課題の解決にはグローバルで大きなニーズが存在します。そのため、中長期的に大規模な市場創造が期待できます。

企業が、社会課題の解決を通じた成長ストーリーを描き、それを価値創造プロセスとして実行・開示し、投資家との建設的な対話に繋げ、将来への成長期待を獲得することが重要です。

価値創造プロセスは、パーパス(企業の社会的存在意義)や長期ビジョン、実効性の高いガバナンスが基盤となります。

それらに加えて、パーパス及び世の中の大きな潮流(メガトレンド)などに基づき特定された自社にとっての重要な社会課題であるマテリアリティ、マテリアリティの解決・実現を通して利益創出に繋げるためのビジネスモデル及び経営戦略(知的財産、人的資本など無形資産への戦略的な投資含む)などから構成されます。

さらに、企業価値創造プロセスでは、スタートアップを含む他社との協創(オープンイノベーション)による新事業創造の加速と効率化、投資家を含む幅広いステークホルダーとの建設的な対話・エンゲージメントも重要な要件です。

このプロセスが優れている企業ほど、自社のマテリアリティの解決・実現に資する革新的な製品・サービスなどを継続的に創出しやすくなります。

その結果、顧客や株主・投資家、従業員を含むステークホルダーへの提供価値と財務価値が増大し、それらがインプットとして次の価値創造プロセスへと循環することになります。

■持続的な企業価値向上に向けたオムロンの取組

■東証の要請を「奇貨」として持続的な企業価値向上への挑戦を

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遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

東北大学理学部数学科卒。NECでソフトウェア開発、品質企画・推進部門を経て、CSR/サステナビリティ推進業務全般を担当。国際社会経済研究所(NECのシンクタンク系グループ企業)の主幹研究員としてサステナビリティ経営の調査・研究に従事。現在はフリーランスのサステナビリティ経営研究家として「日本企業の持続可能な経営のあるべき姿」についての調査・研究に従事。オルタナ編集委員

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キーワード: #サステナビリティ

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