記事のポイント
- NECはサステナ情報開示に特化した「エージェントAI」の開発に取り組む
- エージェントAIとは目標達成のために自律的に判断するソフトウェアだ
- すでにNEC社内で活用しており、資料の読み込みなどの工数を92%減らした
NECはサステナビリティ情報開示に特化した「エージェントAI」の開発に取り組む。エージェントAIとは、コンテンツを自動で生成する生成AIとは異なり、目標達成のために自律的に判断するソフトウェアだ。AIとチャットを繰り返すことでAI側が学習し、自律的に助言するようになる。すでにNEC社内で活用しており、資料の読み込みなどの工数を92%減らした。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

■AIと話し合いながら難解文書を読み解き
「レポート作成業務全体の工数削減はまだ見積もれていないが、専門ガイダンスの読み解きは工数の92%を削減できた」ーー。こう話すのは、NECのサプライチェーンサステナビリティ経営統括部に所属する岡野豊・事業化推進グループディレクターだ。
NECでは、自社の事業と自然資本の関連性をまとめた「TNFDレポート」の年内の公開を目指し、作成に取り組む。TNFDとは、Taskforce on Nature-related Financial Disclosuresの略称だ。日本語では「自然関連財務情報開示タスクフォース」と訳す。
生物多様性など自然関連資本に対するリスクと機会、依存と影響の開示を企業に求めるため、2021年6月に発足した。気候変動に対するリスクと機会などの開示を求めたTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース、2015年に金融安定理事会が設立、現在はISSBに移管)に続く形でできた国際イニシアティブだ。
生物多様性の保全と気候変動への対策は表裏一体の関係にあり、どちらも企業にとって非財務領域の重要な要素だ。こうした非財務価値をいかに財務価値と統合するのか、その「価値創造ストーリー」の実効性を投資の判断指標として採用する機関投資家は増えている。
さらに、非財務領域の開示については法律で義務化する動きも強まる。金融庁は2023年3月期決算から、東証プライム市場上場企業に対して、TCFD提言に基づいた気候変動への対策の開示を義務付けた。まだ自然資本関連の開示は義務化されていないが、今後義務化される可能性は多いにある。
■専門ガイダンスは英語で数百ページにも
■レポートの改善点もAIが指摘する時代に
■課題は「暗黙知から形式知への言語化」
■「会計ファームのコンサルとは違う」
■売る前に自社で試すクライアントゼロの精神