ピジョン、「赤ちゃんを産み育てる壁」にパーパス経営で挑む

記事のポイント


  1. ピジョン新社長は、「企業から育児のリアルやすばらしさを伝えていきたい」と意気込む
  2. 同社は、パーパス経営を通じて、「赤ちゃんにやさしい場所」づくりに本気で挑む
  3. 同社が目指す、赤ちゃんにやさしい未来の社会像について、矢野社長に聞いた

設立以来、60年超にわたり赤ちゃんを研究し、哺乳器・乳首で世界トップシェアを誇るピジョン。パーパスで掲げる「赤ちゃんにやさしい場所」づくりで目指す、未来の社会像について話を聞いた。(聞き手:オルタナ輪番編集長=北村 佳代子、オルタナ編集部=松田 大輔、写真=廣瀬真也)

矢野 亮 (やの・りょう)
ピジョン代表取締役社長。1997年ピジョン入社。国内営業を経験後、2014年に中国の現地法人に赴任。中国事業本部にて営業・マーケティング領域を統括し、伸長するEコマース市場での成長基盤を構築するなど、ピジョングループにおける中国事業の拡大に大きく貢献。2025年にピジョン代表取締役社長に就任。趣味は海釣り。

■8割超の社員がパーパスに共感する

――パーパス(存在意義)に「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」とあります。どのような世界の実現を目指しているのでしょうか。

当社はこの存在意義を実現するために、目指すべき「6つの社会の姿(未来像)」を描いています。

一つ目は「赤ちゃんがいる光景が日常になっている」こと。

特に少子化が進む日本では、一人ひとりの赤ちゃんが存在することの価値が、これまで以上に高まっています。

社会が、赤ちゃんや赤ちゃんのいるご家庭をサポートしなければいけませんが、赤ちゃんに触れる機会が今は減っています。子供の声がうるさくてクレームが入り公園で遊べなくなるなど、心の痛む報道もあります。

民間企業なので、できることは限られますが、それでも、企業が「赤ちゃんのいる生活ってこういうものだよ」と、育児のリアルやすばらしさを伝えることが、社会全体で育児を考え支えることにつながっていくと思っています。

■育児の助け合いが生まれる社会に

二つ目は「育児の助け合いができるゆるやかな繋がりがある」。

核家族化で「ワンオペ育児」という言葉が生まれたように、子育て世代の負担が課題です。最近の若い方はご夫婦で育児をしていこうと考える方も増えてきていますが、「ワンオペ育児が大変」という声は目立つ一方で、「育児が楽しい」という声は案外耳にしません。

もしかしたらお子さんのいらっしゃらない方への配慮もあるのかもしれません。でも聞いてみると、子育ては辛いことも人一倍あるけれど、楽しいことは人二倍あるといった声もたくさんあります。そういう方の想いも、他の人に伝播していくといいなと思います。

当社は日本で中学生向けに「赤ちゃんを知る授業」を実施しています。

少子化が進み、赤ちゃんが身近にいない環境下で大人になる子どもが増えています。「赤ちゃんを知る授業」を通じて、中学生に赤ちゃんへの興味・関心を持ってもらい、社会の一員として自らできることを考え、赤ちゃんや赤ちゃん連れのご家族にやさしい行動を起こすきっかけづくりになればと思っています。

こうした活動を続けていくことも、赤ちゃんにやさしい社会につながると信じています。

子育ては親だけのものではありません。当社の商品やサービスを通じて伝えられることはまだまだありますし、赤ちゃんに対する見方を変えていく活動も、まだまだできると思っています。

矢野社長は「新しい育児の文化を作りたい」と語る

■赤ちゃんは可能性の塊でしかない

――大きな挑戦ですが、同時にとても楽しみですね。

はい。その楽しみにもつながるのが、三つ目の「赤ちゃんの創造性が社会をワクワクさせている」です。

時には大人のモノサシで、「あれ駄目」「これ駄目」となることもあるでしょう。でも、なんの経験も積んでいない赤ちゃんは、創造力がとても豊かで、大人が想像し得ないことで遊び始めたりと、可能性の塊でしかないんですよね。

大人は、「しつけ」などの一環でついレールを敷いてしまいがちですが、私たち大人が、赤ちゃんの創造性から学べることもあります。赤ちゃんから大人や社会に、何かワクワクすることがもたらされるような育児の考え方や、赤ちゃんと社会のかかわり方も、当社は育んでいきたいと考えます。

■産み育てることをハードルにしない

四つ目の未来像が「赤ちゃんを産み育てることがハードルにならない」。ここは、哺乳器をはじめとする商品などを通じて、当社が貢献できている得意領域です。

また社内でも、赤ちゃんを育てやすい環境整備に取り組んでいます。

男性の育児休暇が社会にまだ根づいていない2006年には、当社独自の育児休暇制度として、1カ月間有給で取得できる「ひとつきいっしょ」をつくりました。男性社員の取得率は2016年以降100%を続け、当社には「男性社員が育休を取得することは当たり前」の文化が根付いています。私たちはこの根をさらに伸ばしていきたいです。

ちなみに、「ひとつきいっしょ」は2025年から「すくすくいっしょ」に名称を変更し、最大3カ月間有給で取得できる形にしました。もちろん、育児休暇以外に、不妊治療や養子縁組などを目的としたライフデザイン休暇・休職制度も充実させています。

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matsuda daisuke

松田 大輔(オルタナ編集部)

中央大学総合政策学部卒業。2021年から米国サンフランシスコで研究資料の営業マネジャーとして勤務。2024年に株式会社オルタナ入社。

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キーワード: #パーパス

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