今さらながらのリチウムイオン電池問題、対応は後手後手に

記事のポイント


  1. 環境省は自治体に使用済みリチウムイオン電池の分別回収をするよう指示した
  2. 使用済みリチウムイオン電池の発火事故が相次いでいることを受けての対応だ
  3. しかし、こうしたリスクは以前から多くの専門家が指摘していた

環境省は2025年3月、「市区町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策集」を策定、自治体に使用済みリチウムイオン電池の分別回収をするよう指示した。

生活ごみ(一般廃棄物)に混ざって排出されたリチウムイオン電池入りの電気電子機器が廃棄処分されるとき、圧縮、破砕、落下などによって発火する恐れがある。処理中に発火した場合、処理ラインは停止し、システムは混乱状態に陥る。一旦発火したリチウムイオン電池の火災を止めるのは難しい。市区町村のごみ処理現場で、そのような事態が多発している。こうした状況に直面し、環境省は通知を出したのだ。 

NHKの朝のニュースでも大手全国紙の新聞でも、大々的に問題が取り上げられた。しかし「何を今さら」という感が否めない。リチウムイオン電池の発火問題は、遠の昔から多くの識者によって
指摘されていた。

筆者も2年前に本連載で火災を問題の俎上に上げた。使用中の便利さだけに目を奪われ、廃棄処理するときのことを考えずに生産・消費を行うという現代経済の基本的欠陥を指摘したのだ。

確かに、「言うは易く行うは難で、この問題に的確に対処することは容易ではない。なぜなら、リチウムイオン電池はあまりにも多くの製品に入り込み、生産者の数も膨大で輸入品も多く、生産者責任といっても生産者を特定するのが難しいからだ。

仮に特定したとしても、その生産者は市場にいないかもしれない。だが、政策的対応を早めにしておけば、大量多種の製品が上市される前に、回収と廃棄のルールを決められたはずだ。対応が後手後手になっているという感が否めない。廃棄物処理法上の「指定一般廃棄物制度」などを援用して、生産者の責任を問うこともできたのではないか。

回収だけでは解決しない

有料会員限定コンテンツ

こちらのコンテンツをご覧いただくには

有料会員登録が必要です。

eijihosoda

細田 衛士(東海大学学長補佐、政治経済学部経済学科教授)

東海大学学長補佐、政治経済学部経済学科教授。1953年生まれ。77年慶応義塾大学経済学部卒業後、同大学経済学部助手、助教授を経て、94年より教授。2001年から05年まで同大経済学部長を務めた。中央環境審議会委員や環境省政策評価委員会委員なども歴任した。

執筆記事一覧

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。