記事のポイント
- アースハックスは「デカボmyスコア」を活用した全国調査を行った
- 都道府県ごとに生活者個人当たりのCO2排出量の「違い」を比べた
- CO2排出量が低い生活者の割合が多い県は、栃木県、長野県、愛媛県だった
生活者のCO2排出量を予測するサービス「デカボmyスコア」を運営するEarth hacks(アースハックス、東京・渋谷)は6月16日、同スコアを活用した全国調査を行った。調査の結果、低炭素型のライフスタイルを送る生活者の割合が多い県は、栃木県、長野県、愛媛県だった。要因としては、自動車の所有率が他県に比べて高い一方で、飛行機の利用回数が少ないことがあった。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

アースハックスは、三井物産と博報堂が50%ずつ出資して、2021年11月にできた会社だ。「デカボmyスコア」では、「移動手段」「ショッピング」「住居」「食事」の 4 つの領域で12 問の質問に答えることで、個人の年間CO2排出量を予測できる。
加えて、一般的な行動パターンと比較して、CO2削減率も提示する。デカボとは、脱炭素化を意味する「Decarbonization」から取った造語だ。
今回の全国調査では総数は公開しておらず、CO2排出量はあくまで概算だが、都道府県ごとの排出傾向を見比べることができる。
■個人当たりの排出量、東京や福島が上位に
生活者個人当たりの年間CO2排出量が少ない都道府県は、栃木県(平均4.32トン)、長野県(4.37トン)、愛媛県(4.40トン)だった。一方、個人当たりの年間CO2排出量が多かった都道府県は、東京都(7.28トン)、福島県(6.97トン)、神奈川県(6.94トン)という結果になった。
CO2排出量が少ない県では、自動車の所有率が他県に比べて高い一方、飛行機の利用回数が少ない傾向にあった。アースハックスは、「自動車を主な移動手段として生活に取り入れていることに加え、生活圏が地域内で完結しやすく、飛行機の利用を抑えていることが要因」と分析した。都市圏へのアクセスの良さも、飛行機以外の交通手段の選択を後押ししている可能性があるという。
CO2排出量の多さは飛行機の利用回数の多さと比例していた。東京都、福島県、神奈川県は、フライト由来の排出量でも全国上位に位置した。アースハックスは、「旅行やビジネスにおいて空港を気軽に利用できる立地の良さがあると考えられる」とした。
■生活圏の広さも「デカボ」を左右する
地域別に最も個人当たりのCO2排出量が低かった都道府県は下記の通り。
北海道&東北エリア:岩手県(4.52トン)
関東エリア:栃木県(4.32トン)
東海エリア:愛知県(5.28トン)
北陸エリア:新潟県(4.52トン)
近畿エリア:滋賀県(5.35トン)
中国エリア:鳥取県(4.69トン)
四国エリア:愛媛県(4.40トン)
九州&沖縄エリア:大分県(4.75トン)
四国・九州地方は、一人当たりのCO2排出量が総じて低かった。各県の都市とその周辺地域が比較的独立しており、地域内で生活が完結するライフスタイルが確立されている点が要因の一つと考えられると、アースハックスは分析した。
加えて、農産物の自給率が高く、食生活におけるCO2排出量が抑制されている点も、排出量の低さに寄与したという。
一方、関東・近畿地方では、県ごとのCO2排出量のばらつきが大かった。所得水準の高さに伴い、出張や旅行などでの飛行機の利用頻度や、引っ越しに伴う家電の買い替えの多さが、排出量が増えた要因とした。
都市郊外では、定住傾向が強く、地場の農産物の消費も多い。そのため、地域内で完結する自動車中心の生活スタイルが広く浸透している。
郊外にはゴルフ場や温泉などのアクティブな娯楽施設が多く存在し、都市部から訪れる人も多い一方で、地元住民にとっては日常生活の延長として利用されているのが特徴だ。
飛行機などを用いた遠距離の非日常的なレジャーではなく、地域内での楽しみ方が主流であることも、排出量抑制に繋がった。
■脱炭素アクションのカギは「地元愛」
今回の全国調査について、アースハックスの関根澄人社長は、「地元らしさを感じながら、脱炭素をより身近に考え、取り組むきっかけとなることを目指した」と話した。
地域ごとの生活者一人ひとりの年間CO2排出量を可視化し、都道府県ごとのライフスタイルや排出傾向の違いを見える化した。関根社長は、地域ならではの暮らし方や、そこに根付く「地元愛」は、「無理なく続けられる脱炭素アクションにとって、欠かせないカギだ」と強調した。