記事のポイント
- シーフードレガシーは国際基準に基づく包括的な「人権方針」を策定した
- サプライチェーン全体における人権尊重への明確なコミットメントを示す
- 水産業の強制労働や児童労働など防止につなげたい考えだ
持続可能な水産業を推進するシーフードレガシー(東京・港)は7月9日、国際基準に基づく包括的な「人権方針」を策定した。同社の活動やパートナーとの連携で、サプライチェーン全体における人権尊重への明確なコミットメントを示した。水産業の強制労働や児童労働など防止につなげたい考えだ。(山口 勉)
同社は、2015年に「海のレガシーを未来へ遺すために」をコンセプトに創業した水産業のソーシャルベンチャーで、サステナブルなシーフードの推進と、水産業界の持続可能な発展を目指すコンサルティング事業を展開している。
本方針では、同社の活動やパートナーとの連携において、国際的に認められた人権原則に則り、サプライチェーン全体における人権の尊重と、働く人々の権利の尊重を明確にコミットすることを表明した。
国際的に認められた人権原則とは、全世界で共通して適用される人権保護の枠組みのことで、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」は企業の人権尊重責任を明確に定義している。ILOの中核的労働基準は、結社の自由、団体交渉権、強制労働の禁止、児童労働の撤廃、雇用・職業における差別の撤廃を基本的権利として定めている。

水産業界では、従来から様々な人権課題が指摘されてきた。遠洋漁業における船員の強制労働、長時間労働、暴力的な労働環境、適切な報酬の未払いなどが代表的な例として挙げられる。また、漁業や水産加工業において、児童労働が発生するケースも報告されており、教育を受けるべき年齢の子どもが危険な労働に従事させられる問題も深刻化している。
さらに、人身売買の手段として利用される事例や、移民労働者に対する差別的な処遇、女性労働者への不当な扱いなど、多様な人権侵害が複合的に発生している現状がある。
本方針では、具体的には、水産業における強制労働、児童労働、人身売買の根絶、公正な労働条件の確保、ジェンダー平等、先住民の権利尊重、グリーバンス(救済)メカニズムの整備などを重点的に推進していくとする。
同社は4つの活動エリア(マーケットトランスフォーメーション、ファイナンスエンゲージメント、ポリシーリフォーム、ムーブメントオーケストレーション)で、本人権方針に沿ったリスク管理を実施する。リスク評価、定期的な報告、第三者による独立監査、内部告発保護制度などを通じて、方針の透明性と継続的改善を図る計画だ。
花岡和佳男社長は「シーフードレガシーが描くのは、水産業の持続的成長産業化を通じ、海に関わるすべての人が笑顔と活気に包まれ、未来に希望の明かりが灯る世界だ。その実現に向け、人権尊重は最重要要素の一つだ」と熱を込める。
「今後、この方針を人権尊重における社会的責任を果たすための重要なツールとして、事業活動のあらゆる場面で適用していく」と述べ、従業員への周知徹底や人権デュー・ディリジェンスの実施、救済メカニズムの構築などの継続的な取り組みを約束した。