自分事化して高める「下草刈りのモチベーション」

記事のポイント


  1. 林業の夏の仕事である下草刈りはきついことから常に人手不足に見舞われている
  2. ところが大分県・佐伯広域森林組合は再造林率100%で、担当者のモチベーションも高い
  3. 自分事化して仕事を行えることや、複数年契約で収入を確保しやすい仕組みが貢献している

ただならぬ酷暑の続いた夏だが、林業界で夏の仕事と言えば下草刈りである。造林地の雑草を刈り取る作業だ。だいたい植林後5年間は続けねばならない。(森林ジャーナリスト=田中淳夫)

だが、この仕事はきつい。暑さのほか、ほとんど手作業のうえ急斜面を登り下りする。刈り払い機は使うが、造林作業の機械化は進んでおらず、体力勝負なのである。しかも伐採仕事に比べて賃金が安い。だから常に人手不足だ。再造林率が4割以下の理由にも挙げられる。

ところが大分県の佐伯広域森林組合は、管内の再造林率100%を誇り、造林担当者は100人をはるかに超える。新人はまず組合直営の造林班に入り、仕事を覚えると多くは独立して再造林の請負事業者となる。いわば造林ベンチャーを続々と生み出しているのだ。

造林希望者が多い理由の一つは儲かるから。年収1千万円超の若者もいる。その姿を見れば、どんどん参入してくるだろう。何も無茶な働き方をするわけではない。安全第一で、労働時間は実質6時間、休暇もちゃんと取る。

高収入は、単価が高いからでもない。造林関係の仕事は、ほとんど補助金で成り立つ。国と県、市町村の助成で経費の8割以上は賄えるのだ。これは全国共通で、金額も大きく変わらない。儲かるのは、作業効率を高めたからである。

■5年間は仕事に困らない

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atsuotanaka

田中 淳夫(森林ジャーナリスト)

森林ジャーナリスト。1959年生まれ。主に森林・林業・山村をテーマに執筆活動を続ける。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)『鹿と日本人』(築地書館)『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(ともに新泉社)『獣害列島』(イースト新書)などがある。

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キーワード: #林業

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