「日本は資源を自給自足できる」、長野や岡山がモデル示す

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記事のポイント


  1. 長野県や岡山県真庭市の首長が、資源を自給自足する地域モデルを提示した
  2. 岡山県真庭市では、バイオマス発電事業の売上高は約18.9億円に達した
  3. 再エネや都市鉱山の活用で、「日本は資源を自給自足できる」と専門家

長野県の阿部守一知事や岡山県真庭市の太田昇市長が3月12日、「第8回 未来まちづくりフォーラム」で、資源やエネルギーを自給自足する地域モデルを示した。岡山県真庭市は、盛んな林業を活かしてバイオマス発電を推進し、バイオマス発電事業の売上高(25年6月期)は約18.9億円に達した。中東情勢が緊迫化するなか、東京大学の小宮山宏・第28代総長は、再エネ・都市鉱山・バイオマスなどの活用で、「日本は資源を自給自足できる」と語った。(オルタナ編集部=松田大輔)

資源やエネルギーの自給自足を訴える東京大学の小宮山宏・第28代総長
資源やエネルギーの自給自足を訴える東京大学の小宮山宏・第28代総長

未来まちづくりフォーラム実行委員会(東京・渋谷)は3月12日、SDGs研究所(東京・渋谷)の運営で「第8回 未来まちづくりフォーラム」を開いた。全三部の構成で、産・官・学・民の有識者やリーダーが集まり、地域の未来について議論した。

■クリーンエネルギーの自給自足モデル

全国知事会長を務める長野県の阿部守一知事は、同県の気候変動対策や教育の取り組みを紹介した。

長野県では19年、台風19号の影響で千曲川が決壊した。気候変動の脅威を実感し、同年に気候非常事態宣言を発出。21年には2050年度の温室効果ガス(GHG)排出量実質ゼロに向けた10年間(21〜30年度)の実行計画「長野県ゼロカーボン戦略」を策定し、30年度までにGHG排出量を60%削減(10年度比)という高い目標を掲げた。

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今では、住宅用の太陽光発電の普及率は12.7%で全国第2位、小水力発電の導入件数は99件で全国第1位(いずれも25年3月末時点)となり、クリーンエネルギーの自給自足に向けて、未来の地域モデルの実績を示す。

環境・社会課題が山積するなか、阿部知事は、「社会の基本設計(OS)のアップデートが求められている。全国知事会のスローガンは、現場から日本を動かすことだ。地域から日本のOSを更新していく」と語った。

■バイオマス発電でエネルギー自給率85%に

地域経済の循環について話す岡山県真庭市の太田昇市長
地域経済の循環について話す岡山県真庭市の太田昇市長

続いて、岡山県真庭市の太田昇市長が登壇した。地域経済の「循環図」を示しつつ、地域内で付加価値を高める重要性を語った。

同市の最大の特徴は、エネルギーの地産地消だ。真庭市は、面積のおよそ8割を森林が占める。未利用木材をバイオマス発電の原料とすることで、木材の利用価値を最大化した。

このバイオマス発電事業の売上高(25年6月期)は約18.9億円に達した。太田市長は緊迫化した中東情勢にも言及しつつ、仮に石油でまかなった場合と比べると、約36.3億円相当(灯油価格121円/㍑で算出)の支出を回避したと試算する。

同市のバイオマス発電事業には年間で約11万トンの原料を必要とするが、このうち約70%は未利用木材の活用でまかなっており、持続可能なバイオマス発電を実現した。同市のエネルギー自給率は85%に上り、太田市長は「真庭にあるものを活かす政治を展開していく」と強調した。

■「日本は資源・エネルギーを自給自足できる」

東京大学の第28代総長で、一般社団法人プラチナ構想ネットワーク(東京・千代田)の小宮山宏会長は、再生可能エネルギーや都市鉱山、バイオマスなどを活用することで、「日本は資源を自給自足できる」と強調した。

小宮山会長は、環境・社会が持続可能で、あらゆる人の自己実現を可能にする社会を「プラチナ社会」として構想する。その実現に必要な要素として、「森林」「再生可能エネルギー」「人財」「健康」「観光」といった5つのイニシアティブを推進する。

そのうえで、「日本は資源のない国」という認識は過去の話だと指摘した。岡山県真庭市のような「森林」を活用したバイオマス産業や、長野県のように「再生可能エネルギー」の普及に力を入れ、「エネルギー自給国家」の実現を目指すべきだと訴えた。

■「ビヨンドSDGs」に向けて地域から発信する

千葉商科大学の笹谷秀光客員教授は、SDGsは「これからが本番」と話す
千葉商科大学の笹谷秀光客員教授は、SDGsは「これからが本番」と話す

中東情勢が不安定化するなか、資源やエネルギーの自給自足は地方だけの問題ではない。長野県や岡山県など地域から持続可能なモデルへの転換を発信することは、日本、そして国際社会がSDGsの次の枠組みを検討するときに重要な視点を与える。

国連は2027年9月から、SDGsの次の枠組みを検討する予定となっている。千葉商科大学・客員教授で、未来まちづくりフォーラムの笹谷秀光・実行委員長は、「SDGsは2030年で終わりではない。むしろ、これからが本番だ」と強調した。

SDGsは「規定演技」(共通ルールに基づく実践)となる一方、ビヨンドSDGsは「自由演技」(各社の裁量に基づく実践)になると説明。SDGsで示された課題を踏まえてこそ、初めてウェルビーイングのようなビヨンドSDGsが見えてくると説いた。

このほか、第二部では実践的な取り組みとして、エシカル消費や公共交通、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)などについて議論した。第三部では産・官・学・民の連携をテーマとし、企業や自治体、学術界などの視点から共創の可能性を探った。

matsuda daisuke

松田 大輔(オルタナ編集部)

中央大学総合政策学部卒業。2021年から米国サンフランシスコで研究資料の営業マネジャーとして勤務。2024年に株式会社オルタナ入社。

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キーワード: #脱炭素

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