「当社はサステナブル」は通用しない: 環境省が新ガイドライン

記事のポイント


  1. 環境省が2026年3月31日、環境表示ガイドラインの改訂版を公表した
  2. 「少し良いこと」を「全体で良いこと」のように見せる企業イメージ型訴求も問題だ
  3. 曖昧だった「グリーンウォッシュ」基準が明確になり「官製ウォッシュ」も問われよう

環境省は2026年3月31日、環境表示ガイドラインの改訂版を公表した。自社の製品やサービスだけでなく、「当社はサステナブルな企業」といった企業イメージ型の訴求も、ガイドラインに照らしてその真偽が問われることとなる。グリーンウォッシュの基準が明確になったことで、今後は、行政による「官製グリーンウォッシュ」や業界の表示制度・マークのあり方も、改めて問われよう。(サステナブル経営アドバイザー=足立直樹)

環境省は環境表示ガイドラインを改訂し、グリーンウォッシュの基準を明確にした

■欧米で強まるグリーンウォッシュ規制

環境省は3月31日、環境表示ガイドラインの改訂版を公表しました。2013年版の改訂ですが、背景にあるのは国内事情にとどまりません。むしろここ数年、欧米を中心にグリーンウォッシュへの批判が急速に強まり、法規制、当局対応、訴訟のいずれも厳しさを増しています。そのことは本ガイドラインにも明記されており、巨額の制裁金や集団訴訟に発展していることも紹介されています。

実際、EUでは2024年2月に「グリーン移行のための消費者支援指令(Empowering Consumers for the Green Transition: ECGT)」が採択・発効しました。これにより、一般的で裏付けのない環境主張や、信頼性の乏しいサステナビリティラベルへの規制が強化されます。ただし加盟国での実際の適用開始は2026年9月からであり、企業が直接義務を負う段階はこれからです。

もちろん、すでにその方向性は企業行動への影響を与えており、準備を怠ることはできません。さらに、グリーンクレーム指令についても制度化に向けた審議が続いています。

英国では競争・市場庁(CMA)が2021年に「グリーン・クレーム・コード(Green Claims Code)」を公表しました。その後、「ASOS(エイソス)」「Boohoo(ブーフー)」「George at Asda(アズダが販売するファッションブランド・ジョージ)」に対して、2024年3月に環境主張の出し方を改める正式なコミットメントを取り付けました。なお、これらは各社が自発的に署名したものであり、法的な違反認定ではありません。

米国では連邦取引委員会(FTC)がグリーンウォッシュをめぐり、小売大手ウォルマートに300万ドル(約4億7600万円)、大手百貨店コールズに対して250万ドル(約3億9700万円)という、この分野における史上最大規模の民事制裁金の支払いに至る対応を行っています。

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つまり海外では、グリーンウォッシュはもはや「気をつけましょう」という注意喚起ではなく、法務・レピュテーションの現実的リスクになっているのです。

しかも興味深いのは、こうした批判や当局対応の対象が、必ずしも「誰が見ても怪しい会社」に限られないことです。むしろ、環境配慮を積極的に訴求してきた企業、いわば環境優良企業と見なされてきた企業ほど、発信量が多い分だけ厳しく見られやすいのです。

そもそも環境対応に熱心であることと、表示の厳密さは別問題です。環境への取り組みが進んでいる企業ほど、「少し良いことを、全体に良いことのように見せていないか」が問われる時代に入っています。

■今回の改訂で企業に求められること

そうした国際潮流の中で、日本もようやく対応した、というのが今回の改訂の意義でしょう。

環境省の改訂版は、自己宣言による環境表示について、国際規格であるISO/JIS Q 14021への準拠を基本に据え直し、企業が注意すべき点をアップデートしました。対象も、製品やサービスの広告表示だけではなく、事業活動、企業姿勢など、取引に直接関係しない環境表示まで含めていることが特徴的です。

つまり、「この製品はエコです」だけでなく、「我が社はサステナブルです」という企業イメージ型の訴求も対象なのです。

そして中身を見れば、今回の改訂が企業に求めていることは明快です。

第一に、定性的で曖昧な表現をするな、ということです。改定版は、「環境にやさしい」「地球にやさしい」はもちろん、「グリーン」「自然にやさしい」「持続可能」などのよくある表現について、単独で使うべきではないとしています。「感じの良い言葉」だけではもうダメ、ということです。

第二に、具体的に説明しろ、ということです。環境主張には説明文を付け、何を、どこで、どれだけ改善したのかを定量的に示す必要があります。

第三に、ライフサイクル全体で考えよ、ということです。製品の一部の改善だけで環境配慮を語るのではなく、原料調達から製造、使用、廃棄までを視野に入れ、重大なトレードオフがないかにも配慮すべきとしています。バイオ由来の材料などは、特に注意が必要になるでしょう。

第四に、根拠データと評価方法を示せるようにしておけ、ということです。単に「当社比」で終わらせるのではなく、どのような評価方法で調べた結果、どのような数値になったのかに、容易にアクセスできることが重要とされています。具体例として、二次元コード(QRコード)の活用も示唆されています。

そして第五に、比較主張は慎重に、ということです。「従来品比で○%削減」「業界トップクラス」「環境負荷を大幅低減」といったおなじみの表現に対して、比較対象を明確にすること、LCA(ライフサイクルアセスメント)で評価すること、さらに製品本体の改善と包装の改善は区別して示すことが求められています。

■自社の表示を今すぐ点検するなら

今回のガイドライン改訂を受けて、サステナビリティ担当者として取り組むべき実践的な第一歩は、次の確認をすることです。

・自社の環境表示・コミュニケーションは、上記5つの観点から見て説明できるか
・「サステナブル」「エコ」「グリーン」を単独で使っている箇所はないか
・LCAデータや測定方法へのアクセス経路(二次元コード等)を整備できているか
・包装の改善と製品本体の改善を混同した表現になっていないか

こうして見ると、今回の改訂はかなり実効性がありそうに思えます。海外で求められていることを、日本でもようやく正面から整理したという印象です。

ただし同時に、限界もあります。今回の文書はあくまでガイドラインであり、それ自体に強制力や罰則があるわけではありません。日本としては一歩前進したものの、欧州のように制度そのものを変え、事前の裏付けやより厳格な規制に進んでいる段階とは、まだ距離があります。

とはいえ、企業の行き過ぎた環境表示に対して、これからは「環境省のガイドラインに準拠していますか」と問いやすくなることは確かでしょう。

■次に問われるべき「官製グリーンウォッシュ」

さらに私は、この先に日本固有の問題も存在すると考えています。それは、企業の表現の問題だけではなく、むしろ、官民が一緒になって問題を見えにくくしている、いわば「官製グリーンウォッシュ」的なものがあるのではないか、ということです。

一つ具体例を挙げましょう。

国内では、バイオマスプラスチックを25%以上含むことを示す民間の識別表示制度が、実質的に制度上の優遇措置と結びついて機能してきました。レジ袋有料化制度では、バイオマス素材配合率25%以上で、第三者認証等があるものは有料化の対象外です。

しかし、25%という閾値は、製品全体の環境性能を保証するわけではありません。つまり、化石由来プラスチックによるさまざまな環境問題を解決しているわけではないのに、消費者に誤認を与えかねず、制度上も優遇されているのです。

グリーンウォッシュにならないための基準が明確になったことは、とても重要です。

だからこそ今後は、企業の広告表現だけでなく、行政や業界が認めてきた表示制度やマークのあり方も、これから同じ基準で見直されるべきでしょう。今回の改訂は、その入口に立ったということです。

正直なサステナビリティ表示が、これからの時代の競争力になる。それが、今回のガイドライン改訂が企業に送っているメッセージだと思います。

※この記事は、株式会社レスポンスアビリティのメールマガジン「サステナブル経営通信」(サス経)536(2026年4月2日発行)をオルタナ編集部にて一部編集したものです。過去の「サス経」はこちらから、執筆者の思いをまとめたnote「最初のひとしずく」はこちらからお読みいただけます。

adachinaoki

足立 直樹(サステナブル経営アドバイザー)

東京大学理学部卒業、同大学院修了、博士(理学)。国立環境研究所、マレーシア森林研究所(FRIM)で基礎研究に従事後、2002年に独立。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役、一般社団法人 企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)理事・事務局長、一般社団法人 日本エシカル推進協議会(JEI)理事・副会長、サステナブル・ブランド ジャパン サステナビリティ・プロデューサー等を務める。

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キーワード: #グリーンウォッシュ

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