記事のポイント
- 「プラグインソーラー」が、低価格と設置のしやすさからドイツで急拡大している
- 利用者の電力消費に対する意識が高まり、エネルギー転換の火付け役にもなっている
- .欧州や米国の一部でも広がりを見せる中、日本での普及のカギを専門家に聞いた
「プラグインソーラー」が、価格の安さや、取り付けやすさなどからドイツの家庭で人気を博している。出力は約800Wと小規模だが、利用者の電力消費への意識が高まり、スマートメーターや屋根上太陽光発電などの導入につながる火付け役にもなっている。ドイツ以外の欧州や米国の一部でも、じわりと広がりを見せる中、日本での普及のカギを専門家に聞いた。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

(c) Copyright Yuma Solar via Unsplash.
■低価格で大規模な工事不要の手軽さが人気に
「プラグインソーラー」は、「バルコニーソーラー(ベランダ太陽光発電)」などとも呼ばれる。
通常、プラグインソーラーシステムは、太陽光パネル1~4枚、マイクロインバーター(直流電力を交流電力に変換する、安全機能を備えた電力変換装置)、プラグ付きケーブル、架台(手すり用の取り付け装置など)で構成される。
パネルサイズは約2㎡で、最大4枚まで組み込め、出力は400W~800Wだ。出力は小規模だが、多くの家庭にとっては800Wあれば、昼間の電力使用を十分に賄うことができる。最近では、蓄電機能付きのプラグインソーラーも出てきており、余剰電力を夜間の電力として使用する家庭も増えてきた。
プラグインソーラーの最大の特徴は、設置のしやすさだ。特別な配線・接続のための大規模な工事は必要としない。太陽光パネルが発電する電力は、インバーター(電力変換装置)を経由して各家庭の電力回路に流れ込む仕組みとなっており、多くの場合、利用者自身が、家庭用コンセントに直接差し込むだけで使用できる。
ドイツ政府もプラグインソーラーの普及を後押ししており、他の太陽光発電システムと同様に付加価値税は免除した。加えて法制度上、マンションの所有者だけでなく賃借人にもプラグインソーラーをバルコニーに設置する権利を与えた。賃借人は、引っ越しの際にプラグインソーラーを取り外して持っていくことができる。
太陽光パネルシステムの低価格化も普及拡大の大きな要素の一つだ。小型モデルは200ユーロ前後(約3万7千円)で、蓄電機能付きの大規模システムでも1000ユーロ(約18万7千円)以下で購入可能だ。オンラインでプラグインソーラー専門企業から購入できるほか、ホームセンターやDIY用品店、時にはスーパーなどでも低価格製品が期間限定で販促される。
独ベルリン応用科学大学(HTW)は、初期の導入コストは通常4~7年で回収できると試算する。
■ウクライナ侵攻によるエネルギー危機が普及促す
公益財団法人自然エネルギー財団は2026年3月、報告書「プラグインソーラー~誰もが設置できる太陽光発電の新しい形」をまとめた。本報告書の執筆者であるカロリン・イプトナー上級研究員は、オルタナの取材に対し、プラグインソーラーの普及が拡大した背景に、「ウクライナ危機がある」と話す。

2022年、ロシアによるウクライナ侵攻で、ドイツはロシア産ガスの供給不足に直面した。
「ドイツ市民の多くは、高騰する電気代を抑えたいという気持ちとともに、ウクライナ戦争のような地政学リスクが生活を左右することへの懸念を深めた。他国に依存せずエネルギーを確保したいという意識の高まりが、プラグインソーラーの普及拡大の背景にある」(イプトナー上級研究員)
実際、2021年ごろまではプラグインソーラーの設置数は限定的だった。その後、各種規制緩和もあり、2025年までに登録されたプラグインソーラーシステムの数は120万台を超えた。なお、未登録のまま設置しているケースも多く、複数の調査結果が、2025年にドイツ世帯の推計4~9%がプラグインソーラーを設置している可能性を示す。

(c) 公益財団法人自然エネルギー財団
プラグインソーラーの顧客調査の結果を見ると、購入の主な動機は、「電気料金の削減」を筆頭に、「電力会社への依存度の低下」「環境・気候保護への関心」と続いた。

(ドイツの主要プラグインソーラー事業者YUMAによる2024年顧客調査)
(c) 公益財団法人自然エネルギー財団
■電力に対する意識が高まる
イプトナー上級研究員は、母国ドイツでプラグインソーラーの普及動向を調査した際、プラグインソーラーを設置した人から、アプリで発電状況を確認できることが『楽しい』という声を多く聞いたという。
「電気を使うだけでなく、作る側になったことで、電力消費に目が向くようになり、それが人々の意識や行動の変容にもつながっている」
「プラグインソーラーを設置し、そこに意味を見出した人の多くが、スマートメーターを導入して電力消費を可視化したり、屋根上にも太陽光パネルを設置したりしている。800Wという出力だけを見ると、小さな取り組みにしか見えないが、人々の意識の変革という意味では、とても社会的なインパクトがある」とイプトナー上級研究員は力を込めた。
■ドイツ以外の欧州や一部の米国にも広がる
■日本での普及に向けたカギは

