FIFA2026ワールドカップ、気候変動による熱中症リスクは30年で2倍に

記事のポイント


  1. サッカーW杯が来月、米国、メキシコ、カナダの15都市で開幕する
  2. 気候研究機関は、一部試合では危険な暑さの下で行われると警鐘を鳴らす
  3. 前回米国で開催された1994年と比べ、熱中症リスクはほぼ2倍になった

FIFA2026ワールドカップが2026年6月11日、米国、カナダ、メキシコ3カ国の15都市(16会場)で激戦の火ぶたを切る。国際的な気候の研究機関「ワールド・ウェザー・アトリビューション」は5月14日、全104試合のうち約25%が、熱中症リスクの高い激暑になると発表した。前回1994年の米W杯に比べ、熱中症リスクはほぼ2倍に高まっており、屋外スタジアムでは観客も熱中症で倒れる可能性がある。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

FIFAワールドカップ2026では、熱波で選手やファンが危険な状況に直面する可能性も

気候に関する研究機関のワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)は5月14日、FIFAワールドカップ2026で、熱波により選手やファンが危険な状況に直面する可能性があるとする分析結果を発表した。WWAは、極端な気象現象への気候変動の寄与を分析する国際イニシアティブだ。

WWAの科学者らは、実際に予定されている開催地と試合時間を考慮した分析を行った。その結果、全104試合のうち、約25%が「WBGT(湿球黒球温度)26℃」を超える条件下で行われる可能性がある、とまとめた。

「WBGT」は日本でも熱中症予防の温度指標として用いられており、「暑さ指数」ともいわれる。「WBGT26℃」は、国際プロサッカー選手会(FIFPRO)が、冷却などの安全対策を講じるよう推奨している水準だ。

日本スポーツ協会でも、熱中症予防のための目安としてWBGTを使った「熱中症予防運動指針」を定めており、「WBGT21未満:ほぼ安全(適宜水分補給)」「WGBT21~25:注意(積極的に水分補給)」「WBGT25~28:警戒(積極的に休憩)」「WBGT28~31:厳重警戒(激しい運動は中止)」「WBGT31以上:運動は原則中止」の5段階を示している。

さらにWWAによると、全105試合のうち約5試合は、「WBGT28℃」を超える可能性があることも示した。これは乾燥下なら気温約38℃、高湿度下なら約30℃に相当し、FIFPROはこの水準を、「プレーには危険」と位置づけ、試合の延期を推奨している。

前回米国でサッカーW杯が開催された1994年に比べ、熱中症リスクがほぼ倍増しているとの分析結果を受け、国際プロサッカー選手会(FIFPRO)は、保護措置を強化するよう、改めて要請した。

■選手だけではない、熱中症リスク

試合会場となる全16スタジアムのうち、冷房設備を有しているのは3カ所だ。具体的には、ダラスAT&Tスタジアム(米テキサス州)、ヒューストンNRGスタジアム(米テキサス州)、アトランタ・メルセデス・ベンツスタジアム(米ジョージア州)だ。

日本代表チームのFグループでのリーグ戦は、1試合目の対オランダ戦(6月14日)と3試合目の対スウェーデン戦(6月25日)が、どちらもダラスAT&Tスタジアムで行われる。なお、2試合目の対チュニジア戦(6月20日)は、エスタジオ・モンテレイ(メキシコ)の屋外スタジアムだ。

WWAは、スタジアムに冷房は効いていても、ほとんどの試合において、アリーナの外に出れば、3回に1回はWBGT 28℃を超える気温にさらされると見込む。また、すべての開催都市では、「ファンフェスティバル」の屋外開催も予定されており、数十万人のサポーターが暑熱の影響を受ける可能性があると警告した。

決勝トーナメントでは、18試合が屋外スタジアムで開催される。決勝戦、3位決定戦および準々決勝2試合は、少なくとも1割の可能性で、試合中に「WBGT26℃」を超えそうだという。

■「人間の活動によってわずか32年で急激に温暖化」

WWAの科学者らは、1994年のワールドカップ以降のこうした暑熱リスクの急増は、人為的な温暖化に起因するものだと結論づけている。

英インペリアル・カレッジ・ロンドンで気候変動・極端気象を研究するジョイス・キムタイ博士は、「​人間の活動による気候変動の約半分は、W杯が前回北米で開催された1994年以降に発生したものだ。その結果、わずか32年で、本大会が直面する気候をまったく異なるものに変えてしまった」と話す。

「主催者はマイアミやカンザスシティといった冷房のない高リスク地での試合のキックオフ時刻を遅らせるなどしてリスク低減を試みているが、選手やファンにとって、安全とは言えない条件下で、試合が行われるリスクが現実的に存在する」(キムタイ博士)

同じ英インペリアル・カレッジ・ロンドンで気候科学教授を務めるフリーデリケ・オットー博士も、「地球上で最大級のスポーツイベントである決勝戦そのものが、『中止すべきレベル』の暑熱下で行われるという無視できないリスクを抱えている。この事実は、FIFAとファンにとっての警鐘となるべきだ。気候変動の影響を受けない社会の領域はもはや存在しない。今こそ、この緊急性の認識が必要だ」とコメントした。

■熱中症リスクが特に高いとされた試合
■専門家らがFIFAに公開書簡「給水休憩は少なくとも6分」

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #気候変動

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