ワールドカップ最中に「FIFAは石油企業との契約打ち切りを」とデモ

記事のポイント


  1. FIFAに化石燃料企業とのスポンサー契約廃止を求める抗議の声が上がった
  2. FIFAは、企業別排出量が世界一の石油会社とスポンサー契約を締結している
  3. 危険な暑さの中、温暖化の主要因をつくった化石燃料業界の広告を見る矛盾を訴える

サッカーワールドカップ最中の米国で6月21日、FIFA(国際サッカー連盟)に対して化石燃料企業とのスポンサー契約の打ち切りを求める抗議の声が上がった。企業別排出量で世界トップクラスのサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコがFIFAのスポンサーとなっていることを問題視した。温暖化の影響で選手やサポーターが危険な暑さに直面する中、温暖化の主要因をつくった化石燃料業界の広告を目にする矛盾を訴えている。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

FIFAのスポンサーのサウジアラムコは世界最大の排出企業
(米カリフォルニア州のSofiスタジアムにて)
(c) Bill Forbes

化石燃料業界の広告に関しては、国連のグテーレス事務総長が2024年6月、すべての国に対して、その広告を禁止するよう強く呼びかけている。かつて健康への脅威からタバコ産業の広告が禁止となったように、グテーレス事務総長が「気候カオスのゴッドファーザー」と呼ぶ化石燃料業界の広告を禁止する動きは、すでに世界各地で始まっている。

しかしFIFAは、2024年4月にグローバル・パートナーシップにサウジアラムコを選定し、2026年の男子W杯や2027年の女子W杯を含む複数の大会でのスポンサー権を同社に付与した。このスポンサー契約は、環境団体や人権団体から反発を招き、100人以上の女子プロサッカー選手がFIFAに対し、契約の破棄を求める声明を発表した。

2026年5月には、健康、気候科学、スポーツの各分野の専門家グループが、FIFAのサウジアラムコとのスポンサー契約に言及した公開書簡に署名し、化石燃料の積極的な推進は選手の福祉の保護との利益相反になると主張した。

しかしFIFAは、サウジアラムコとのスポンサー契約を擁護し、その収益は「あらゆるレベルのサッカー界に再投資されている」との姿勢を貫いている。

■プロアスリートらも抗議デモを支持する

6月21日には環境活動家らが、W杯開催スタジアム5カ所を含む主要なスポーツ会場で、FIFAやその他プロスポーツ団体に対して、化石燃料業界との関係を断つよう求める抗議デモを展開した。

6月21日にSofiスタジアムでの活動家らによる抗議の様子
(Photo by Apu GOMES)

この活動を支持する元イングランド代表プロサッカー選手のデビッド・ウィーラー氏は、「スポーツのなかでも特にサッカーには、何十億人もの人々に影響を与え、勇気づける力がある。FIFAはその力を活用して、社会に貢献すべきだ」と話す。

また米メジャーリーグのロサンゼルス・エンゼルスの投手ブレント・スーター氏も、現役の米国人プロアスリートとして初めて、スポーツ界での化石燃料広告に反対の声を上げ、抗議活動を支持した。

スーター氏は「世界中の人々がW杯を観戦している。これは、私たち全員が同じ船に乗っていること、この地球が一つであることを改めて思い起こさせてくれる良い機会だ。気候問題についても大きなメッセージを発信する絶好の機会だ」と話す。

抗議活動を主導したザン・デュビン氏は、スポーツ界で化石燃料企業がスポンサーとなって自社を広告することについて、スポーツウォッシュだと指摘する。

「化石燃料の使用で温室効果ガスが排出され、それが今の危機的な気温上昇を招いている。それにもかかわらず、その企業がスポンサーとなって広告を出し、ファンにとってはその広告もW杯の思い出の一部となる。多くの人に愛されるスポーツと結びつくことで、化石燃料企業は、自社が引き起こす汚染や深刻な気候変動を覆い隠し、健全なイメージを植え付けようとしている。これがスポーツウォッシュの問題だ」

デュビン氏は、大谷翔平選手らが活躍するドジャースのオーナーに対して、石油会社フィリップス66との契約解消を求める「化石燃料に反対するドジャースファン」活動を展開し、これまで3万人近い署名を集めてきた。彼女は「私たちの狙いは、サウジアラムコやその他の石油・ガス関連のスポンサー契約を打ち切ってもらうことだ」と話す。

参考記事:五輪やMLBの「スポーツウォッシュ」に冷たい視線や抗議も
参考記事:ドジャースタジアム前でなぜハローキティが汚されたのか
参考記事:「スポーツウォッシング」がMLBなどプロスポーツのリスクに

■「化石燃料企業が、選手やサッカーそのものを危険にさらした」

気候変動の影響や解決策を研究する米非営利団体のクライメート・セントラルの調査結果によると、2026年のW杯の大会期間中(6月~7月)は、初めて北米でW杯が開催された1970年に比べて、ほぼすべての開催スタジアムにおいて、「極端に暑い日」の数が増える。

実際、6月11日のワールドカップ開幕日に米テキサス州ヒューストンで開催されたFIFAファンフェスティバルでは、3万人以上が参加する中で、100人以上が熱中症の症状を訴えたと現地メディアが報じている。

クライメート・セントラルは、2026年のすべての開催スタジアムの平均値で見ると、大会期間中の「極端に暑い日」のうち、49%が石炭・石油・天然ガスといった化石燃料の燃焼が原因だと分析する。

ウィーラー氏は、化石燃料企業が地球温暖化を促進した結果、サッカー選手やサッカーというスポーツそのものを危険にさらしていると主張する。

「化石燃料企業が、気候危機を著しく悪化させ、選手たちの健康を危険にさらすほどの酷暑下でのプレーを強いている。それだけではない。異常気象による過度の干ばつや豪雨によって、草の根レベルでサッカーができる環境へのアクセスも制約を受けている」(ウィーラー氏)

参考記事:FIFA2026ワールドカップ、気候変動による熱中症リスクは30年で2倍に

■サウジアラムコの排出量は世界全体の4.3%も

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #脱炭素

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