サステナ経営塾2026:〔ESG情報発信とIR戦略〕荒井勝・日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)エグゼクティブ・アドバイザー講義

記事のポイント


  1. PRI(責任投資原則)は発足20年を迎え、責任投資は世界で広く普及へ
  2. 非財務情報は法定開示の時代へ移行。企業の将来価値を左右する
  3. 非財務情報を開示し、投資家との対話を深めることが価値向上に

オルタナは7月15日、「サステナ経営塾」22期上期第3回を開いた。第4講には、NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)の荒井勝・エグゼクティブ・アドバイザーが登壇し、「ESG情報発信とIR戦略」と題して講義した。講義の要旨をまとめた。

NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)の荒井勝・エグゼクティブ・アドバイザー

・荒井氏は、企業価値を考えるうえで重要なのは現在の業績だけではなく、「将来どれだけ価値を生み出せるか」という投資家の期待であると説明した。企業の株価には将来への期待が反映されており、その期待を支える情報として、ESGをはじめとする非財務情報の重要性が高まっている。

・責任投資原則(PRI)は2006年に発足し、2026年で20周年を迎えた。署名機関は現在約5,000機関を超え、運用資産は約128兆ドルまで拡大している。荒井氏は、「PRIが目指しているのは、責任投資が特別な投資ではなく、すべての投資のスタンダードになることだ」と説明した。

・ESG投資の原点となる社会的責任投資(SRI)は、1920年代の米国で始まった。その後、2006年のPRI発足を契機に、ESGは特定のテーマへの投資ではなく、通常の投資判断の中にESG要素を組み込む「インテグレーション」の考え方へ発展した。これにより、年金基金など長期投資家も本格的にESG投資へ参画するようになった。

・企業を取り巻く社会環境も大きく変化している。企業活動が社会や環境へ与える影響はますます大きくなり、企業には利益だけでなく社会的価値の創出も求められるようになった。荒井氏は、「企業は自社の存在意義や社会に提供する価値を明確にし、それを発信することが重要だ」と話した。

・企業価値を判断するうえで、財務情報だけでは十分ではないという認識も広がっている。財務情報は過去の業績を示すものである一方、人的資本や知的資本、ガバナンス、環境・社会への取り組みといった非財務情報は、企業の将来価値を生み出す源泉となる。荒井氏は、「投資家は企業の将来価値を判断するために、こうした無形資産にも注目している」と説明した。

・企業の情報開示を巡る環境も大きく変化している。ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)による国際基準の整備や日本での制度化を受け、有価証券報告書でサステナビリティ情報を開示する時代となった。非財務情報は「任意開示」から「法定開示」へと大きく転換しており、企業には財務情報とあわせて、将来の価値創造につながる情報を適切に発信することが求められている。

・統合報告書やウェブサイトなどでの情報発信の重要性も高まっている。荒井氏は、「評価機関や投資家は公開情報をもとに企業を評価する。トップメッセージや中長期の成長ストーリー、財務とのつながりをわかりやすく示すことが重要だ」と述べた。また、事業ごとのESG課題や取り組みを具体的に示すことも評価につながるとした。

・投資家とのエンゲージメントについても、「企業は一方的に評価される存在ではない」と強調した。ESG情報を積極的に開示し、自社の考え方や戦略を丁寧に説明することで、自社の価値観に共感する長期投資家との関係を築くことができるという。「これからは企業が投資家を選ぶ時代でもある」と述べ、対話を通じて企業価値を高めていく重要性を説いた。

・さらに、ESGへの取り組みはリスクへの対応だけでなく、イノベーションの創出や企業価値の向上、企業の持続的成長にもつながると説明した。社会や環境の変化をリスクではなく事業機会として捉えることが、企業の競争力強化につながるとの考えを示した。

・最後に荒井氏は、日本語の「責任」と英語の「Responsibility」の違いについて紹介した。日本語では「責任を取る」という意味合いが強い一方、英語では「説明責任を果たし、信頼される能力」という意味を含むという。「サステナビリティ情報の開示は単なる義務ではなく、社会や投資家との信頼関係を築くためのコミュニケーションである」と締めくくった。

susbuin

サステナ経営塾

株式会社オルタナは2011年にサステナビリティ・CSRを学ぶ「CSR部員塾」を発足しました。その後、「サステナビリティ部員塾」に改称し、2023年度から「サステナ経営塾」として新たにスタートします。2011年以来、これまで延べ約700社900人の方に受講していただきました。上期はサステナビリティ/ESG初任者向けに基本的な知識を伝授します。下期はサステナビリティ/ESG実務担当者として必要な実践的知識やノウハウを伝授します。サステナ経営塾公式HPはこちら

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キーワード: #サステナ経営塾

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