オルタナは5月20日、サステナ経営塾22期上期第1回を開いた。第3講では、「未理解点の洗い出し」をテーマにワークショップを実施した。主な質疑応答の内容は下記の通り。

・「経営層をどのように説得すればよいか」という質問に対して、森は「海外のIRツアーなどで投資家の声を直接聞くことが重要だ」と指摘した。株価や時価総額、企業価値向上との関係を実感することで、経営陣の理解も進みやすくなるという。また、「大口取引先のサステナビリティ担当役員に、自社にとってサステナ経営がなぜ重要なのかを話してもらうことも有効だ」とし、取引先からの要請や期待は大きな説得力を持つと説明した。
・アウトサイド・インの考え方について質問が出た。これに対して森は、「社会課題に目を向けることが重要だ」と説明した。事例としてオムロンの家庭用血圧計を挙げ、「病院に行かなければ分からなかった血圧を家庭で測定できるようにしたことで、新たな社会ニーズを事業化した」と紹介。「身の回りの社会課題の中に新規事業のヒントがある」と述べた。
・「経営層の理解が進まない」「社員への浸透が進まない」といった悩みも共有された。特に「社員がサステナビリティレポートを読んでいるのか分からない」という声に対しては、「レポートのページ数を減らし、マガジンライクな構成にすることが大事だ」とアドバイスした。また、「マテリアリティなどの専門用語を一般社員にも分かるように説明すること」「非財務の業績評価を取り入れること」なども重要だとした。さらに、「昇進・昇格の要件としてサステナビリティリテラシーを求める企業もある」と紹介し、サステナ経営検定3級を全社受験している企業事例にも触れた。
・「サステナビリティをどう自分事化するか」という質問に対しては、石油由来原料を扱う製造業を例に、「ナフサ供給の不安定化は地政学リスクであると同時に、サステナビリティリスクでもある」と説明した。その上で、「石油を使わない素材を考えられるか」「ホルムズ海峡問題の次に何が起こるかを読むこともサステナ担当者の仕事だ」とし、2つ先の未来を読む視点の重要性を強調した。
・グリーンウォッシュについても質問が出た。森は「環境省が2025年3月にガイドラインを公表したが、日本国内での本格的な規制強化はまだこれからだ」と説明。一方で、「海外で事業を展開する企業は、日本では問題にならなくても海外で批判を受ける可能性がある」と指摘した。海外での自動車会社の事例にも触れ、「最初に反応が起きるのは海外市場であり、グローバル展開企業ほどリスクを意識する必要がある」とした。
・経済合理性との関係については、「サステナビリティへの取り組みが、短期的にすぐ利益へ直結するとは限らない」と説明した。一方で、「人的資本の観点では非常に重要だ」とし、サステナビリティに真剣に取り組むことで、優秀な人材の採用や定着につながり、長期的には組織力の強化につながると述べた。
・情報収集の方法についても質問が出た。森は、「海外ニュースをキーワードで拾う、省庁サイトを確認する、企業情報を参考にするなど、日常的な情報収集が重要だ」と説明。「英語の『ESG』『サステナビリティ』などのキーワードでニュースがスマートフォンに届くよう設定するのも有効だ」と紹介した。
・ESG評価と株価の関係については、「SDGsへの対応を早期に始めた企業と、出遅れた企業では差が生まれている」と指摘。女性管理職比率の向上などを例に挙げ、「早く動いた企業ほど、その後の経営や業績にも良い影響が出ている」と説明した。
・「ネットゼロ」「カーボンニュートラル」など言葉の使い方への注意点も議論された。森は、「オフセットは間違った概念ではないが、実際にはCO2を排出しているにもかかわらず、排出を相殺する仕組みである」と説明。グリーン電力証書についても、「世界ではその有効性に疑問を呈する声も出始めている」とし、日本と海外との認識ギャップに注意が必要だと述べた。
・社内浸透の方法としては、「従業員をサステナビリティのモノサシで評価することも重要だ」と説明した。売上や利益などの財務指標だけでなく、非財務指標を評価項目に組み込む企業が増えているという。「役員だけでなく、今後は社員にも非財務評価が広がっていくだろう」とした。一方で、「職種によって求められる内容は異なるため、職場や職制に応じた評価設計が必要だ」とも指摘した。
・非財務指標を人事評価へ組み込むプロセスについても質問が出た。森は、「脱炭素や人権だけでなく、ボランティア活動やプロボノ活動を評価に組み込む企業もある」と紹介。「地方自治体との包括連携協定の締結や地域との関係構築は、将来の顧客や事業機会につながる可能性もある」と述べた。


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