■私たちに身近な生物多様性(28)[坂本 優]
日本には比較的観察しやすい3種類のセキレイがいる。ハクセキレイ、キセキレイ、セグロセキレイだ。このうちキセキレイは、名前のとおり、腹部から尾羽の根本にかけての黄色が特徴で、わかりやすく観察しやすい。ユーラシア大陸からアフリカ大陸にかけて世界中に広く分布している。
写真はいずれも東京・板橋区内の石神井川で撮影したものだ。写真では黄色が目立つが、上から見下ろすと背中の灰色が周囲に溶け込んでしまい、意識して探さないとなかなか目にとまらない。しかし、いったん見つけると腹部の黄色から目で追いやすい。
石神井川では、私の印象としては、9月から2月頃まで比較的よく見かける。川の水際を眺めながら歩いていると、岸部に寄せられた落ち葉を持ち上げたり、裏返したりしながら餌を探す姿が目に入ってくる。
石神井川では、一回り大きいハクセキレイも一年中観察できる。数はハクセキレイのほうがだいぶ多い。ハクセキレイは、環境変化への適応力も強いとされており、現に周辺の住宅街や公園などにも広く生活圏を広げている。
そのハクセキレイも秋にはしばしば水際の落ち葉伝いに餌を探している。そして近くにキセキレイがいることに気づくと威嚇して追い払う。
ただ、ハクセキレイ同士の争いのときに比べ、しつこく追いかけることは少ないようだ。キセキレイも承知しているのか、15―30メートルほど距離を置くと採餌を再開する。ビクビクしている様には見受けられない。キセキレイなりに、秋の石神井川で生息域を確保している。